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【ベンチャー型事業承継のススメ】ファミリービジネスが変える日本の未来

2015.12.09

ファミリービジネスのポテンシャル

日本は97%の企業が同族経営です。日本経済の大半を動かしている圧倒的に大きいパイ。しかし、いまだに前近代的な経営手法を取っているところがほとんどです。首相が経団連に社員の給料を上げるように要請していますが、大企業でも実現は難しい。

しかし、ファミリービジネスは、経営手法を少し変えるだけで5%や10%の給料を上げられるくらい事業を成長させられる可能性がある。これまで地味な分野としてとらえられていましたが、経済成長の面で大企業よりはるかにポテンシャルが高いと考えています。

しかもベンチャー企業と比べても優位です。すでにキャッシュがまわっていて、経営資源があって、長年培った信頼もあるんですから。有利なところからスタートできる家業承継は、ロジカルに考えればアドバンテージのほうが大きいはずなんです。

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後継ぎ社長は「前提」を変えろ

「起業家はかっこよくて、後継ぎがかっこわるい」と世間から思われている理由の一つが、ファミリービジネスの後継者は「現状維持」を前提に物事を考えているからです。

ファミリービジネスもベンチャー企業同様、「会社をどう成長させるか」という大前提に立つべきです。両者が「10倍、100倍に伸ばす」という同じ前提に立ったとき、どちらが成功確率が高いか。私はファミリービジネスのほうが、はるかに高いと考えています。

一度は飛び出した家業

海外留学から帰国して28歳で入社した家業は、堅実経営ではあったものの、株主でもある親族の公私混同などがみられ、前近代的な経営が常態化していました。改革を訴えるものの、父親は「総論賛成、各論反対」で、「とにかく時間をかけてやってくれ」と言う。私の感覚では2カ月でやれることを20年でやれという状況でした。変革には痛みを伴うので時間をかけることで和らげたいと思ったのでしょう。激しく衝突する日々が続き、半ば匙を投げた形で退職し、別の会社で働き始めました。

しかし、当時はバブル経済。リゾート法が施行され、大手がどんどん参入し、日本中にリゾート施設が急増していった時代です。会社の将来を憂いた一部の株主から「戻ってきてほしい」と要請がありました。

変革のために戻るのだから意思決定権を得ることが条件。取締役会の議決権を得る、つまりは父親との直接対決です。迷いはありませんでした。子どもの頃から、祖父は周囲に「うちの4代目です」と私を紹介していましたし、後を継ぐのは自分の使命だと思っていました。そのためには権力を奪取するしかないと(笑)。31歳の時です。

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星野リゾート

代表

星野 佳路氏

http://www.hoshinoresort.com/

「星のや」、温泉旅館「界」、リゾートホテル「リゾナーレ」など、全国35施設の宿泊施設の運営。