商品開発/新事業

スポンジ素材の加工メーカー株式会社ジョウナンが取り組む、新製品開発と販路開拓とは

2023.11.01

“すべてスポンジでできている”というキャッチフレーズのもと、ポリエチレンスポンジやウレタンスポンジを原材料にさまざまな製品をつくる株式会社ジョウナン。創業60年、工業用製品や梱包資材のメーカーとして成長してきた。

主な製品のひとつは外壁の防水工事に使うバックアップ材。建築用資材として必要不可欠なこの製品をポリエチレンスポンジで関西で初めて製造したのは同社だといわれている。もうひとつはガスメーターのパッキン材。10年ごとに交換を義務づけられている重要な設備だが、パッキン材を生産している企業は意外に少ないため、シェアの高い製造元のひとつになっている。

主力製品のひとつ、ガスメーターのパッキン材

そんな同社が新製品開発と販路開拓に力を入れている。その理由を代表取締役の藤谷氏はこう話す。「主力製品のガスメーター用パッキンも、今後は設備の小型化に伴って生産が縮小されてしまうかもしれません。それに代わる第2の柱をつくらなければならない。そこで以前より委託加工していた一般雑貨製品に“遊び心”を持った製品を提供できないかと乗り出しました」。

オリジナル商品第一号はペット用品の『ねこなべちゃん』。大手の化学メーカーが消臭効果の高いトドマツのパウダーを開発したのをきっかけにスポンジにできないか発案した。開発にあたっては試作品をネコカフェに持ち込み、実際に猫が使うのかを検証。トドマツパウダーがポリエチレンスポンジの独特な臭いを消し、消臭効果と癒し効果の高い製品に仕上がった。

トドマツのパウダー入りスポンジでできた「ねこなべちゃん」

もうひとつは『マスクバンド』。コロナ禍に大阪府内のものづくり企業が集まり、それぞれの得意分野を活かして対策予防品をつくろうと企画されたのがきっかけだ。「マスクを長時間つけていると耳が痛くなったり紐で皮膚がかぶれたりするので、予防する製品をつくれないかなと思って」と取締役営業部長の重森氏。「形やデザインは女性社員が主体になって考えました」。伸縮性と耐久性を考慮したカラフルなマスクバンドが完成し、大型ショッピングセンターの展示販売で好評を得たという。

コロナ禍に開発した「マスクバンド」

そんな中、あるところから製品開発の話が舞い込む。大阪体育大学の女子バレーボール部からスポンジ素材を使って練習器具をつくってほしいという依頼があった。バレーボールのブロックを効果的に決める練習のため、ネット際にひもを通して空間をつくる留め具を考えることになり、試行錯誤の末にできた製品が『激落ちブロック』。今、この『激落ちブロック』が全国のバレーボール部に口コミでじわじわと広がっている。

バレーボールの練習器具「激落ちブロック」

同社はこの話をきっかけに、大阪体育大学女子バレーボール部とスポンサー契約を結ぶことになった。スポンサーとしてユニフォームへのロゴ掲出、体育館でのバナー掲出、チームの公式SNSでのPRなどを予定している。「私も学生時代はラグビーをしていたので、こんな形でスポーツに貢献できてうれしいですよ」と藤谷氏。スポーツ領域への販路開拓が実現した。

このようにスポンジ素材は多様なカタチに加工できるため、業種を問わず対応できるのが強みだが、その一方で加工技術にも多様性が求められる。「お客さまの多くは図面もデータもない状態で“こんな感じのものをつくってほしい”とイメージを伝えてこられます。初回の試作でどれだけそのイメージに近いものを提案できるか。そこでジョウナンの実力が試されます」と取締役工場長の山田氏。どの製品も最終的に技術力に行き着く。

「製品開発は100個のうち1個成功すればOKという世界。いろいろ試さないとだめですね」と、藤谷氏たちは今、エンドユーザーの動向や時代のニーズを見ながら第3の柱を探している。

左から取締役営業部長 重森氏、取締役工場長 山田氏

(取材・文/荒木さと子)

株式会社ジョウナン

代表取締役 藤谷 修三氏
取締役工場長 山田 将幸氏
取締役営業部長 重森 隆行氏

https://jp-mfg.com/jounan/

事業内容/建築用資材・ガスメーター部品・家電部品・工業用パッキン等の加工販売