ウェアラブルカメラで視覚障がい者の生活を支援
「リモートアシスト」は、視覚障がい者がつけた遠隔カメラの映像を通して、ボランティアサポーターが視覚障がい者の目の代わりを務めるシステムだ。
レンズを前方に向けたウェアラブルカメラを耳の部分に装着して起動すると、サポーターのパソコン上に映像が映し出され、双方向での音声のやりとりで視覚障がい者の困りごとをその場で解決する仕組み。
買い物時の商品選びや資料に書かれた文字の読み上げなど日常生活をサポートすることで「できないことへのストレスがなくなる」「時間が有効に使えるようになった」など利用者から喜びの声が届いている。
藤井氏はもともとパナソニックの社員。テレビの営業を担当するうち番組表の読み上げ機能について視覚障がい者から問い合わせを受けたことをきっかけに、事業で視覚障がい者に貢献できないかと考えるようになった。
担当商品がウェアラブルカメラに代わった時、「リモートアシスト」の原型となるアイデアが浮かんだ。会社に事業化を提案したが「サポート体制までの構築は難しい」との判断だったことから自身での事業化を決意し、55歳で中途退職。2017年9月に創業した。
国内の視覚障がい者は弱視を含めると約170万人。ニッチなマーケットに見えるが「ターゲットが明確に定まっている」ことが事業の強みという。製品化に当たっては信頼性を重視し日本製にこだわった。
だが、ソフトウェアの開発、サポーターネットワークの構築などに要する費用で退職金はあっという間に飛んだ。
ビジネスプランコンテスト「ビジコンOSAKA 2018」でベンチャー部門の大賞を受賞したことで認知度は高まり利用者、サポーターともに着実に増えてはいるものの、普及のネックとなっているのが月額5,400円という利用料金だという。
自治体に「日常生活用具」として認められれば障がい者は1割負担で購入できるが、「実績が問われるため、認定のハードルは高い」という。
視覚障がい者向けのシステムを持続可能なものにするために現在新たに取り組んでいるのがBtoB向けの事業展開だ。一例が、介護や訪問看護事業者向けなどに遠隔で初心者に指導できるツールだ。
「人手不足の解消につながるツールとして我々では考え付かないような使い方もできるのでは」とリモートアシストの持つ可能性に期待をかけるとともに、将来は「映像コミュニケーションプラットフォーム」をめざす。
(取材・文/山口裕史)
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