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どんなに高い壁も登りきる、それが面白い

2018.06.01

近年、「ボルダリング」をはじめとして注目され愛好家が増えているフリークライミング。各地にジムができ、2020年の東京オリンピックではスポーツクライミングが正式種目に。

約30年前からクライミングジムを運営する林氏は、日本に屋内クライミングを広げてきた先駆者だ。「遊びでやっているから続いてきたんです」。

現在、大阪にあるクライミングジムの経営者の半数は「CITY ROCK GYM」の元スタッフとジムのお客様だという。

柏原市出身。信貴山や大和川を遊び場に育ち、中学生の頃、山でロッククライミングをする社会人グループと出会う。「初めて岩を登らせてもらったら、『落ちたら死ぬ』という恐怖と背中合わせの面白さを感じ、ハマりました」。

オーシーエスという社名は高校時代に山岳仲間と作ったグループ「OSAKA CLIMBING SOCIETY」の頭文字から。

高校、大学とのめり込み、一般企業に就職して1年目、山岳競技クライミング部門の国体選手に選ばれて総合優勝。寄稿していた山岳雑誌の編集部から、ビルの窓拭きをするクライマーの話を聞き、会社を辞めて東京へ。無給で高所清掃のノウハウを学んだ。

林氏はプロの山岳ガイドでもあり、クライミングガイドブックの著書もある。

1988年、大阪に戻ってオーシーエスを創業。最初は認知度も仕事もない。新聞やテレビに声をかけてデモンストレーションをしたところ、話題を呼び、依頼につながるようになった。

クライマーとして培った技術を用いれば、ゴンドラを下ろせず、足場も組めないような特殊な形の建造物でも、ロープひとつで必要な場所に向かうことができる。危険な場所ほど単価は高い。

支点を取ることができればダムなどの高所作業も可能だ。

「一般の清掃会社では100%できないことが、クライマーの自分たちには100%できる。自信を持っています」。清掃業は今に至るまで同社を支える収益の柱だ。著名なタワーや建築物も手がけており、清掃だけでなく高所作業や鳥害対策も請け負っている。

同時期に始めたのが、クライミングウォールの製作。窓拭きは雨だと作業ができず、スタッフが事務所に集まって時間を持て余す。「全員クライマーなので、倉庫の壁をクライミングウォールにすれば面白そうだと思いつきました」。

クライミングは山でするものだった時代。アメリカやヨーロッパの会社に手紙を書き、資料やサンプルを取り寄せて研究。材木や塗装業者の協力も仰ぎながら試作を重ねた。完成したウォールの強度は高く、自社工場での製造から設計、取り付けまですべてをこなす。

30周年を迎える「CITY ROCK GYM」。開設当時に作った壁が一部残り、強度を実証している。

1989年には、日本初となるインドアクライミングジム「CITY ROCK GYM」も誕生。一般の人々にクライミングの楽しさを伝えてきた。「壁一枚で誰もが遊べる」と、子どもや障がい者向けのイベントも実施している。

新しい競技、スピードクライミング用の高さのある壁も設置。体験イベント用の自立式パネルなど、同社が特許を取得したものも。

「山では死にかけたこともあれば、人を助けたこともある」という林氏。登った先の景色が見たいという冒険心と、命をかけた遊び。事業を引っ張っているのは、生粋のクライマー魂だった。

代表取締役・クライミングプロデューサー 林 照茂氏

(取材・文/衛藤真奈実 写真/福永浩二)

株式会社オーシーエス

代表取締役・クライミングプロデューサー

林 照茂氏

http://www.ocsweb.net
http://www.cityrockgym.com
事業内容/登山家による外壁クリーニングなどの特殊高所作業。クライミングウォールの設計・製作・販売・取付、クライミングジムの運営