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日本製のコスメをアメリカに J-Beautyのクオリティを世界へ!

2025.08.04

株式会社北尾化粧品部の海外進出の歴史は古く、創業間もない1920年頃から貿易を行っていた。戦争を機に一時休止するも、2000年からアジアを中心に輸出を再開。2020年に現地法人KITAO USAを設立し、アメリカ市場に向けて自社ブランドを展開し始めた。

アメリカ進出のきっかけについて、マーケティング営業部の久我氏は「弊社の方針として、“一番大きい市場に挑戦したい”という考えがありました。日本より大きい市場といえばアメリカと中国。中でも、ブランドのストーリーに共感いただける国という点で、アメリカに挑戦することを決めました」。進出にあたり、同社は『KITAO MATCHA(キタオ マッチャ)』を商品化。現在では、アメリカのみならず18か国へ輸出するまでに成長している。しかし、そこまでにはいくつかの課題もあった。

アメリカ、イタリアの展示会に出展し、海外マーケットに展開。

一つめの課題はパッケージ。同社は日本製を打ち出すために、日本での展開と同じく漢字を使ったパッケージで勝負しようと考えていた。しかし『生茶』という漢字のブランド名が中国製を想起させることが判明。そこでパッケージデザインをアメリカのデザイナーに依頼し、商品名をアルファベット表記に変更。アメリカの化粧品市場ではめずらしいクラフト感のある紙管の化粧箱で差別化を図ったところ、現地での反応が格段に上がった。

もともと日本製コスメはアメリカで評判が良い。高品質で安心・安全の信頼感があることに加え、クレンジング、洗顔、化粧水、クリームといった丁寧な日本流のスキンケアルーティンにも評価が寄せられていた。しかも海外では抹茶はインナービューティに効果があるという認識もある。「アメリカでは製品の背景にあるストーリーに関心が高く、パッケージの裏面を見て成分の確認をする人が多いんです。そうした現地の特性に合わせて完成したのが『KITAO MATCHA』です」。

クラフト感のある紙管の化粧箱で差別化を図った自社ブランドのクリーンビューティシリーズ『KITAO MATCHA』。

二つめの課題は販路の開拓だった。ある展示会で、大手コスメセレクトショップから引き合いがあった。このショップの店頭に並ぶとブランドの格が上がり、その後の販路拡大が見込めるといわれている。実際、同社の製品はその後大手流通店でも取り扱われ、2024年からはアメリカの「Amazon」でも販売をスタートしている。一方で、上記のような大手流通店への販路で得られる粗利は低く、継続するには収益が厳しい。「大手流通店での販売は自社ブランドの販路を確保するための先行投資」と、商社機能に乗り出す。日本製の他社ブランドを仕入れてアメリカへの販売を始めたのだ。「今、たくさんの外国人観光客が日本でコスメを購入していますが、それを現地でも買えるように提供したのです」。同社は商社機能で得た収益を自社ブランドの販売に投資することで、事業の安定化を図ろうとしている。

そして今、同社が取り組むのがJ-Beauty(ジャパンビューティ)の展開だ。現在、アメリカではK-Beauty(韓国コスメ)が市場の約3割を占めている。久我氏は展示会の各国の出展数を見て、「一丸となって面で展開している韓国に対して、日本は単独で戦っている」と表現する。「韓国は流行をつくるのが上手なんです。一方、日本は“良いもの長く使う”という価値観を大切にしています。長期的な視点でみると、日本のようなブランドの提供こそがユーザーのためにもなると考えています」。同社はJ-Beautyの牽引役として、今後ますます存在感を高めていきそうだ。

マーケティング営業部 OEM Div. 久我 幸弘氏

(取材・文/荒木さと子)

株式会社北尾化粧品部

マーケティング営業部 OEM Div.

久我 幸弘氏

http://kitao.co.jp

事業内容/化粧品の製造販売