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きめ細かい対応力が強み、業務用中華麺で関西No.1

2025.12.03

戦後間もない頃、代表の王氏の祖父が創業した太陽製麺所株式会社。当初はうどんからスタートし、その後蕎麦、そして中華麺へと取り扱いの幅を広げてきた。「中華麺は当初、町の中華料理店向けが中心でしたが、ラーメン店の台頭とともにそれぞれの店の要望に合わせ、太さ(極細麺から極太麺まで)や形状(ストレート麺、ちぢれ麺、平麺)の違いなど、多種多様な麺づくりを手掛ける中でノウハウを蓄積してきました」と王氏。

代表取締役 王 志文氏

そのおいしさが評判を呼び、製法をまねようと主原料である“かんすい”の成分が書かれた段ボールが、ゴミ捨て場から盗まれたこともあったという。「今でも段ボールには成分が書かれているのですが、その一件以来正しい成分がわからないような表記にしています」といたずらっぽく笑う。現在では関西一円に2,600店の顧客を持ち、生麺だけで400近い種類の麺を製造している。

同社では、34台のハイエースを保有し、大阪、京都、神戸を中心に各店舗に自社配送を行っている点も大きな特徴だ。エメラルドグリーンの車体に「麺」「麺類一式」と書かれたハイエースを街中で見かけたことのある人も多いだろう。一見すると配送を委託してもよさそうだが、あえて自社配送にこだわる理由について王氏は「店舖とのコミュニケーションの中から得られる細かい要望が、商品の改善にも活かされています。なにより信頼関係の維持にも欠かせません」と語る。

2,600店の店を支える、自社配送のハイエース。日々の信頼が走る。

大学を卒業後、いったん太陽製麺所に入社した王氏だったが、「外の世界も経験したい」と考え、急成長中の転職サイト運営会社に入社した。面接の際、創業社長に対して、自身が製麺所の跡継ぎであることや、業界の先行きに対する不安を率直に伝えたところ「私なら製麺会社の経営者だったとしても世界一にする自信がある」と言われ、その言葉が王氏のマインドセットを大きく変えたという。その後、先代である父が急逝したことを受け、2019年に社長に就任。いきなりコロナ禍に直面し、売上げが最大で半減する困難に見舞われたが、配送頻度の見直しなど大胆な業務効率化を進めるきっかけにもなった。また、営業専門の部署を新設し、近年大型化が進むラーメンチェーン店の本部に対しても対応できる体制を整えた。

装置産業の側面が強い製麺業界にあって、きめ細かなニーズに対して小ロットからでも対応できることが、同社の差別化要因となっている。また、わずかな環境の違いが製麺工程に影響を及ぼすだけに、新たなアイデアを形にする際にも多様な麺づくりを行ってきた経験が生きている。「何でもチャレンジしてみる精神で、健康や食の楽しさを追求した商品開発に積極的に取り組んでいきたい」と語る王氏。これからも製麺技術でラーメン業界を支えていこうとしている。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)
※掲載写真は、編集部にて撮影したもの以外に、取材先企業からご提供いただいた写真も含まれています。

太陽製麺所株式会社

代表取締役

王 志文氏

https://www.taiyoseimen.co.jp

事業内容/各種麺の製造