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―次の“挑戦”へ― 継承した挑戦者精神で さらなるグローバル化へ

2026.02.06

1933年創業の株式会社ミナミダはクギの製造からスタートしたが、2代目の時にボルトの製造に着手。3代目では冷間鍛造の技術を生かし自動車部品を手がけるなど、着実に事業を拡大。2011年にはタイに、2018年にはメキシコに工場を設けるなど海外展開にも積極的に取り組んできた。

4代目に当たる南田氏は大学3年生の時、興味のあったアパレル業界で働こうと「会社は継がない」と父親に伝えた。だが、その時に父親が見せたさみしそうな表情に心が揺れる。「それまで継いでほしいと言われたことはなく、好きな道を歩もうと思っていました。でも父親の表情を見て、本当は継いでほしかったんだなと。高校時代に心配をかけたことも思い出して、継ごうと思い直しました」。卒業後は、家業と取引関係のある鉄鋼商社に就職し、営業職としてインドで3年9か月駐在。2013年、30歳の時に家業へ入った。

代表取締役社長 南田剛志氏

入社後は営業の傍ら品質管理責任者を兼務し、2018年にはメキシコ工場の立ち上げにも携わった。入社当時37億円ほどだった売上げは、5年で70億円目前にまでに急拡大した。だが、コロナ禍で大きな打撃を受け、50億円を切るまでに落ち込む。社員の給与カットにまで踏み込まざるを得ない状況に直面した南田氏は、「自身に掛けている保険金がおりれば社員の給与を払える」とまで思い詰めた。それでも前を向き、経営理念づくりに着手した。「売上げが減少し、従業員のモチベーションも低下していました。あらためて、どんな会社をめざしているのかを考え直し、それを従業員全員で共有したいと思いました」。

新しく掲げた企業理念は「今をもっとおもろく」。「自分の人生を振り返った時、どんな時に幸せを感じたかを思い出してみたら、自分の成長を実感している時だったんです。そして、自分の成長を実感できている時が一番おもろかったよなぁ、と」。この理念のもと、「みんなの為に」「前のめり思考」など10の行動規範も定めた。2022年には久しぶりに新卒社員を採用、この理念に共感しての入社だった。

また、南田氏は自動車部品以外のマーケットで、かつ未経験だった自社開発、BtoC事業へのチャレンジを決め、公益財団法人大阪産業局が実施する新商品開発プロジェクト「大阪商品計画」に参加した。プロジェクトに参加した社員が音楽好きだったことから、冷間鍛造技術を用いて着想したのが、スピーカーの振動を抑え音質を向上させるインシュレーターだった。その後、自社で製造を手掛けたことのある放熱金属部品のヒートシンク技術を生かした冷凍食品用の解凍プレート、さらにはプレス技術を生かしてヤシの木の皮で作るお面「WILDMASK(ワイルドマスク)」を続々と商品化。「WILDMASK」は大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンで展示する機会も得て、大きな反響を呼んだ。また、これまで人が行っていた単純作業を協働ロボットで代替してきた経験やノウハウを生かし、協働ロボットの選定から購入、据え付け、操作指導までをパッケージ化し提案する「ロボットSIer」事業も、社員からの発案で事業化した。「おもろく」の文化は着実に根付きつつある。

ヤシの木の皮で作るお面「WILDMASK」。

先代の急逝に伴い、2023年に社長に就任した南田氏は、「当初5年間は積極投資を行い、コロナ禍の時のようにぐらつかない収益基盤を築く」ことを目標に据えた。その目玉となるのが、インド法人の設立だ。鉄鋼商社勤務時代に駐在した経験から、インド市場の可能性を目の当たりにしてきた。「インド市場そのものをターゲットにしていますが、魅力的なのはインドの人材。今後さらなるグローバル化を進めていくうえで、その人材の力を最大限に生かしていきたい」と先を見据える。加えて、タイ工場では新規顧客からの受注に対応するために増築し、米国で現地化が進む自動車部品生産に応じるべくメキシコ工場の増築も並行して行う。さらに、本社工場のリニューアルも今春完成予定だ。国内市場は縮小を見込んではいるが、現在外注している金型の内製化をいずれは実現させ、その技術を武器に海外で戦っていくことも考えている。

理念に共感して入社した新卒社員から「入社前に社長が仰っていた“会社像”に全然なれていない」と言われたこともあった。「グループ全体で360人。すぐに変わることはできないが、飛行機が離陸する際の前輪が浮き上がった状態には来ている。一旦離陸すれば急上昇していくので、もう少し長い目で見てほしい」と語り、納得を得た。それを受け、5年前に定めた行動規範を職制、年次を混合した社員10人に作り直してもらっているところだ。「前向きな社員にこの会社を引っ張っていってもらいたい」との思いが、そこにはにじむ。

初代から90年余の歴史で培われた「前のめりのチャレンジスピリッツ」を南田氏も確実に受け継いでいる。「今は投資が先行している状態。これをしっかり果実として収穫していくことが私の使命」と語り、グループで75億円の売上げを、そして創業100周年にあたる7年後には「100年100億円」をめざす。「ぐらつかない地盤を築き、55歳で引退する」という自身の目標に向け、今はただ走り続ける。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

株式会社ミナミダ

代表取締役社長

南田 剛志氏

https://minamida.co.jp

事業内容/冷間鍛造品の製造