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―次の“経営”へ― 人情派から理論派へ 円滑な従業員承継を実現

2026.02.04

中小企業庁の「中小企業白書2023年版」によると、事業承継のなかで「親族内承継」が占める割合は年々低下しており、それに代わって伸びているのが「従業員承継」「社外への引継ぎ(M&A)」だ。倉田氏は2023年に「従業員承継」という形で株式会社デジックの社長に就任した。

代表取締役社長 倉田慎介氏

デジックの前身は戦後間もない頃に創業した鉄工所だ。父親から大手下請け事業を引き継いだ現会長の上野氏は、1980年代、恩師の技術者と共に開発したCAD/CAMシステムの販売をきっかけに事業転換し、1988年にデジックを設立した。同時にパッキン製造事業にも乗り出し、一方でその鉄工所は閉業した。その後、「町工場の業務効率化を支援したい」という思いから、小規模製造業向けに開発した生産管理ソフトをパッケージ化、外販。ソフトの本格開発に携わる人材として2008年に迎えられたのが現社長の倉田氏だ。数年後にバージョンアップし商品化されたパッケージソフト「アシスト」は徐々に市場から高い評価を得て、主力商品となる。

代表取締役会長 上野雅弘氏

上野氏に食道がんが見つかり手術入院を余儀なくされたのは2016年のこと。万一の事態に備え、後継者を指名しておく必要があると考えた。3人の娘が事業を継ぐ予定ではなかったこともあり、開発チームで統率力を発揮していた倉田氏に白羽の矢を立て、入院前にその意思を伝えた。幸いにも快復した上野氏は「従業員承継ならば、さらに『継ぎたい』と思ってもらえる会社にしなければならない」と、利益率の高い商品の開発と財務の健全化に取り組んだ。以降、倉田氏は統括部長から取締役、専務へと段階を踏んで、約3年前に社長に就任。経営書を読むことが好きだったという倉田氏は、特段気負うこともなくワクワクする気持ちもあったという。一方で、理論派の倉田氏と、人情派の上野氏との間ではときに軋轢も生じた。「ストレスを感じることもあったが、彼は自分をしっかり持っているからこそ安心できた」と上野氏は振り返る。

倉田氏は、まず社員の役職をいったん白紙に戻し、職能基準を明確にした上で再設定することで社員のモチベーション向上を図るとともに、一人ひとりの社員にプロジェクトリーダーの役割を与え、「社員主体の経営」を進めてきた。事業面では、「アシスト」について、「日本のものづくりを寄り添いながら支える」を標榜し、導入前の組織づくりとDXも併せて提案できる体制を強化。また、パッキン事業については、新たに半導体製造装置向けを手がけさらなる成長を見据える。「関わる人を大切にし、常にチャレンジ精神を忘れない会長の思いを受け継ぎながら会社をさらに発展させていきたい」とバトンの重みを受け止めながら、思い描く会社像へとステップを加速させていこうとしている。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

株式会社デジック

代表取締役会長 上野 雅弘氏
代表取締役社長 倉田 慎介氏

http://www.digic.org
https://assist-series.jp
http://graphite-jp.com
事業内容/生産管理システムの開発・販売、 グラファイトパッキンの製造・販売