Bplatz press

先代社長の急逝から4年、若き夫婦の挑戦

2018.11.29

株式会社オーミヤは1958年に設立された。伸銅品の加工を得意とし、水道用配管継手、農業用噴霧ノズルなどの製造販売を行っている。東大阪の自社工場内で試作から量産までを行う金属製品加工メーカーだ。

代表の道野氏は2014年に26歳の若さで新社長に就任。理由は父である先代社長の急逝だ。

当時、アウトドア製品を扱うベンチャー企業で仕事に打ち込んでいた道野氏は、病に弱った父の願いで同社を継ぐと決意したものの、「3年かけて仕事を教えるから」という父の言葉を信じて“のんびり”構えていたが、父の病状は進行し、3年どころか道野氏の入社ひと月後に亡くなる。

代表取締役 道野 弘樹氏

「引き継ぎはたった1日だけ。その時に教えてくれた唯一のことが、『経営者にとって大切なのは資金繰りと会社のビジョン。お金を回して夢を語ることが君の仕事や』という言葉です」。

新社長として会社に入るとわからないことだらけ。「計画書もなく、父がどのように経営をしてほしかったのか、わかるものが何もなかった」。道野氏は手書きのメモを頼りに進むしかなかったという。

そんな道野氏を支えたのが妻である出貝氏。同社の社員でもある出貝氏と強力なタッグを組んだ経営が始まった。

経営資源を人、モノ、カネ、情報に分類し、さまざまな取り組みに着手。なかでも最も大変だったのは人に関することだったと振り返る。「祖父が創業した会社を父が継ぎましたが、祖父の頃から働いている社員たちの理解を得るのが難しかった」。

パソコンを使った業務、オンライン受注、原価計算の導入、製品開発の素材変更など取り組みたいことは山ほどあったが、旧体制を一新するには多くの労力と時間を要した。

「その時に自分には覚悟が足りないと思いました。責任感を持って本気で立ち向かっていかないと事は成し遂げられない」と道野氏。そこから組織改革にも本気で取り組んだ。

自社内工場で製造に取り組む社員たち

配置を変え、部門長を変え、組織の若返りを図っていった。新卒採用、中途採用も始めた。長く下の世代が育たない状況が続いていたが、社員の平均年齢が下がり、若くやる気のある人材が頭角を現し始めた。

「思えば祖父も父も社員を大事にしていた。できるだけたくさんの人に働く場所を提供したいという思いでやっていたから、皆、勤続年数が長かったんです」。

旧いものを新しくする一方で、引き継いでいきたいものもある。それは人を大切にすること。「ファンづくりですね。社内にも社外にも、自分たちをサポートしてくれる協力者がいなければならない」。

出貝 圭美氏

特に社内の人材育成には力を入れている。道野氏は自身の若さを強みに、若い社員たちが何を望んでいるのかを聴いて具体的な策を示す。

会社を離れてもひとりの社会人として自信を持てるように資格支援制度をつくったり、部門の垣根を越えてコミュニケーションできるように親睦費の補助も行う。

会社を引き継いで約4年半。株式会社オーミヤは道野氏の時代が始まっている。

事業承継後は夫婦でさまざまな改革に着手してきた。

(取材・文/荒木さと子 写真/Makibi)

株式会社オーミヤ

代表取締役 道野 弘樹氏
出貝 圭美氏

http://www.ohmiya.co.jp

事業内容/水道配管継手、農業用噴霧ノズルならびに屋外用細霧冷房の製造販売