Bplatz press

農家と買い手のギャップを埋める産直野菜マーケット

2013.09.10

dokuta

バイヤーとして勤めていた産地直送野菜専門店が開店半年で店を畳んでしまうことを知り、「それなら自分にやらせてほしい」と懇願して店を買い取リ、「野菜ソムリエの店のら」として事業を開始した。
「産直といいながら、扱う商品の半分は品揃えのため卸売市場から仕入れていた。そのやり方を改め、国産はすべて産直に切り替えると決めた」と河村氏。「周囲の99%から反対された」が、逆境でこそ燃えるタイプ。北海道から沖縄までじかに農家を訪ね、とことん食べ歩いた。

“河村基準”で扱う野菜を選び、農家の言い値で買い取り続けた。すると「のらで売りたい」と、まず農家の間で評判がたった。一方、売り場では安売りをやめ、じっくりと接客の時間を取って野菜の特徴を伝え、一人ずつファンを増やし、赤字だった店はほどなく黒字に転換した。

店はマーケティングの場でもある。新品種を生産したという農家からトマトを仕入れ、常連客に既存の人気品種と新品種のトマトを食べ比べてもらい、どちらがおいしいかアンケートをとった。大方の予想を覆して、甘みの強い新品種に軍配が上がった。さらに甘みを増したほうがいいという客の声を伝え、改良を加えたトマトは、店の一番の売れ筋に育っている。

あるとき人気飲食店のシェフから、「野菜を安定的に買い付けることができないか」と相談を受けた。毎日能勢の農家を回り、注文分をセットにして飲食店に配送した。少量の注文を嫌う農家と、欠品を警戒する飲食店をつなぐため、両者を仲介するネット上の産直システムを思いついた。飲食店はサイト上で欲しい野菜ごとに小ロットでどの農家にも注文できる。各飲食店からの合計注文数をもとに、農家は宅配便で野菜をのらに送り、のらは飲食店ごとに野菜をパッキングし宅配便で送るというアイデアだ。しかし周囲からは「そんなビジネスモデルは100%無理だ」といわれた。

しかし、河村氏はまたも周囲の反対をバネに奮起する。ユーザーの声をかき集め、簡単な操作でシステムが使えるように改良を加え、飲食店の数を集める一方、農家には翌週の出荷予測を事前にサイト上にあげてもらうことで両者のミスマッチを防いだ。農家には納品書と送り状を、飲食店には注文した野菜から自動的にお品書きが作成できる機能をつけ喜ばれた。その後スーパー向けのシステムも開発し、現在は消費者向けサイトも構築中だ。「農家と買い手を直接つなぐとまったく意思疎通ができない。それを翻訳するのがわれわれの役割」と河村氏。現在加盟農家は3000件、8月には東京に出店。「日本の農業を復活させる」布石を着々と打っている。

dokuta02-03
▲(左)農家に消費者のアンケート情報をフィードバックすることで、店一番の売れ筋に育ったトマト「アイコ」。(右)千里中央に店舗を構える。

dokuta04
▲生産者の顔を見ながら、こだわりの野菜を小ロットから発注できる。

dokuta_p
▲代表取締役 河村 賢造氏

※【長編】「日本の農業を変えたい」 小さな八百屋の大きな挑戦 はこちら
https://bplatz.sansokan.jp/archives/1078

ドクター・オブ・ジ・アース株式会社

代表取締役

河村 賢造氏

http://www.dr-earth.co.jp/

設立/2007年 資本金/600万円
従業員数/12名 事業内容/千里中央で産直野菜を販売する「野菜ソムリエの店のら」を運営。インターネットで農家と飲食店、小売店を仲介するサイトを開設し軌道に乗せている。