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地産地消を身近なものに変えたい!大阪の採れたて野菜の配達で食生活を豊かに

2020.10.05

 
大阪で暮らす人のもとへ、大阪で育てられた野菜をいち早く届けるのが「となりの畑」だ。週に一度、旬の野菜を詰め合わせに。朝収穫して、早ければ昼過ぎには注文者の自宅へ届く。

 

運送会社が作ってくれた専用のトラックで配送。

 
近年、野菜のネット通販は大手をはじめ、競合が多い。

その中で、大阪発・大阪着の新鮮さと地産地消を掲げSNSでカスタマーと直接やり取りし、昔ながらの八百屋さんのようなコミュニケーションで差別化を図る。

「とことんウェットな関係を作りたい」という代表の山口氏。「いかに日常に溶け込めるかがカギ。野菜は生き物なのでトラブルは防ぎ切れない。何かあれば声を挙げてもらえる関係性こそ命綱です」。

作り手の紹介や調理・保存の方法、子どもの好き嫌いといった身近な話題や“映えない”日常の写真で交流している。

 

野菜の産地や種類の他にレシピや情報を載せて詰め合わせに同封している。

週単位で変わる旬の野菜を詰め合わせて届ける。

 
外資系の大手証券会社に勤めていた時、会社が倒産。産休中だった山口氏は戻る場所を失い、夫の転勤で大阪へ。子どもがいると職探しさえ難しい社会に驚き、起業を決意。

子どもたちに食の豊かさを伝えたいと、農家の声を発信する情報誌作りを手がけた。葉っぱ付きの大根、巨大なズッキーニ。取材先で分けてもらう採れたて野菜は、スーパーに並ばない規格外の形ばかり。

ママ友にお裾分けするといつも好評で、こんなに喜んでもらえるならと「となりの畑」をスタートした。野菜づくりへの思いや姿勢に共感できる農家と関係を結び、集荷と配達は地元の運送会社に依頼。自らポスティングして顧客を開拓してきた。

 

野菜の収穫などのイベントも実施、カスタマーとは家族のような関係をめざしている。

 
2018年、大阪に台風が直撃し、野菜が全滅。二日後にはスタッフが長野へ飛び、一から農家を探して宅配を継続した。「鮮度を保てるという強みは産地が近いからこそ。でも、そこにある災害リスクの高さを思い知りました。今も端境期に助けてもらう関係を築いています」。

長野には大阪にはないキノコや果物があり、逆に大阪産の葉物の美味しさを改めて知るなど、ピンチだったが新しい発見の連続でもあったという。

 

古民家で開催していた「大阪野菜を食べる会」。

 
少量多品目の農家が多い大阪野菜の特性を活かし、今後の展望も広がる。

大阪在住のアジア人に向けた母国の野菜の栽培、素材にこだわる男性がターゲットのアウトドア料理教室、野菜の美味しさをその場で味わえるキッチンカーなど、めざすのはコミュニティ作りだ。

新鮮で珍しい野菜がたくさん揃い、料理好きや料理人が気軽に集まる場があれば、再び大阪が天下の台所になり、豊かな食生活が広がるのではないか。そう信じている。

 

代表取締役 山口沙弥佳氏

 
▶ 起業をめざしている人へ
ピンチこそチャンス。動き続ければ出会いがある!

 
(取材・文/衛藤真奈実 写真/福永浩二)

株式会社Food Story Japan(となりの畑)

代表取締役

山口 沙弥佳氏

事業内容/大阪野菜の宅配サービス