地産地消を身近なものに変えたい!大阪の採れたて野菜の配達で食生活を豊かに
大阪で暮らす人のもとへ、大阪で育てられた野菜をいち早く届けるのが「となりの畑」だ。週に一度、旬の野菜を詰め合わせに。朝収穫して、早ければ昼過ぎには注文者の自宅へ届く。
近年、野菜のネット通販は大手をはじめ、競合が多い。
その中で、大阪発・大阪着の新鮮さと地産地消を掲げSNSでカスタマーと直接やり取りし、昔ながらの八百屋さんのようなコミュニケーションで差別化を図る。
「とことんウェットな関係を作りたい」という代表の山口氏。「いかに日常に溶け込めるかがカギ。野菜は生き物なのでトラブルは防ぎ切れない。何かあれば声を挙げてもらえる関係性こそ命綱です」。
作り手の紹介や調理・保存の方法、子どもの好き嫌いといった身近な話題や“映えない”日常の写真で交流している。
外資系の大手証券会社に勤めていた時、会社が倒産。産休中だった山口氏は戻る場所を失い、夫の転勤で大阪へ。子どもがいると職探しさえ難しい社会に驚き、起業を決意。
子どもたちに食の豊かさを伝えたいと、農家の声を発信する情報誌作りを手がけた。葉っぱ付きの大根、巨大なズッキーニ。取材先で分けてもらう採れたて野菜は、スーパーに並ばない規格外の形ばかり。
ママ友にお裾分けするといつも好評で、こんなに喜んでもらえるならと「となりの畑」をスタートした。野菜づくりへの思いや姿勢に共感できる農家と関係を結び、集荷と配達は地元の運送会社に依頼。自らポスティングして顧客を開拓してきた。
2018年、大阪に台風が直撃し、野菜が全滅。二日後にはスタッフが長野へ飛び、一から農家を探して宅配を継続した。「鮮度を保てるという強みは産地が近いからこそ。でも、そこにある災害リスクの高さを思い知りました。今も端境期に助けてもらう関係を築いています」。
長野には大阪にはないキノコや果物があり、逆に大阪産の葉物の美味しさを改めて知るなど、ピンチだったが新しい発見の連続でもあったという。
少量多品目の農家が多い大阪野菜の特性を活かし、今後の展望も広がる。
大阪在住のアジア人に向けた母国の野菜の栽培、素材にこだわる男性がターゲットのアウトドア料理教室、野菜の美味しさをその場で味わえるキッチンカーなど、めざすのはコミュニティ作りだ。
新鮮で珍しい野菜がたくさん揃い、料理好きや料理人が気軽に集まる場があれば、再び大阪が天下の台所になり、豊かな食生活が広がるのではないか。そう信じている。
▶ 起業をめざしている人へ
ピンチこそチャンス。動き続ければ出会いがある!
(取材・文/衛藤真奈実 写真/福永浩二)