【ロングインタビュー】オリオン株式会社のパロディ菓子革命!「ココアシガレット」誕生秘話とは

「ココアシガレット」や「梅ミンツ」「ミニコーラ」などのロングセラーを生み出し、近年はパロディ菓子の世界で存在感を発揮しているオリオン。パロディ菓子ゆえの難局を乗り越えながらたくましく歩み続ける駄菓子メーカーの矜持をオリオン株式会社の常務取締役企画本部長、高岡五郎氏に聞いた。
―「ココアシガレット」はどのように誕生したのでしょうか?
元々森永製菓が戦前の1932年に発売していたようですが、戦後になって原材料不足で売らんようになったみたいです。創業者の3人は森永製菓を退職して会社を興したので、それを引き継いだんでしょう。発売は1952年で原料は砂糖とココア、ハッカだけ。5円で発売しました。
戦後すぐに発売されたタバコ「Peace」はハトがオリーブをくわえているデザインで人気を博したのですが、ココアシガレットの箱のデザインもそれに乗っかりました。
当時はお父さんの威厳があった時代。そのお父さんが吸う大人の嗜好品であるタバコに憧れを感じ、タバコを吸う真似をしてみたいという子供心をうまくとらえたんでしょうね。
1991年にリニューアルをした時にはパッケージをキャラクターを使ったものに変えたのですが、元に戻してほしいという声が多く、すぐに戻しました。多い時で年間1,800万個売れましたが、今でも年間400万個程度売れています。
最近では歌手のあいみょんがココアシガレットをくわえた写真が話題を呼んでまた火が付きました。

左から「ミニコーラ」「ココアシガレット」「梅ミンツ」。
― そこから商品をどんどん増やしていったのですね。
次にヒットしたのが「梅ミンツ」です。ココアシガレットがタバコを模したものだったので、今度はライターを真似ました。当時売れていたダンヒルのライターの形を原型にしています。
なぜ梅ミンツかというと、大人がよくかんでいた仁丹のシリーズで梅仁丹が発売されてこれが良く売れていたんで、これを真似たんです。これも大人への憧れを商品にしたものです。
大手の菓子メーカーのように、うちはテレビで宣伝するだけのお金がありませんから、どうやったら買う人の目に止まるかを考えて商品化していました。

パッケージが自動販売機風のペーパクラフトになったココアシガレット。組み立てて遊ぶことができ、付属のtaspoをイメージしたカードを差込み口に挿入すると、中のココアシガレットが落ちてくる仕組みだ。
― 1977年に発売した「ミニコーラ」では訴えられたそうですね。
コーラの赤い缶のデザインを模して商品化し、中にラムネを詰めて発売したのですが、大手飲料メーカーのアメリカ・ジョージア州の本社の代理人から不正競争防止法に触れているとの警告文が送られてきました。これは相手が相手だけに勝ち目はないと思いました。
結局、高等裁判所まで争ったのですが、「飲料とお菓子は分類が違うので問題ない」などの判断で勝訴しました。だれも勝つとは思ってへんかったのでまさかの奇跡ですわ。
― 勇気を得ましたね。
それに味をしめて(笑)パロディ商品をどんどん出していきました。1990年に、使い捨てカメラ「写ルンです」を真似た「食ベルンです」を発売したところ、富士フイルムから連絡が入って。
ちょっと身構えたんですが、フィルムのおまけに使いたいので緑色の「食ベルンです」をつくって欲しいという依頼で、ホッとしました。BtoBの大成功例ですね。

― 商品はどのようにして考えているのですか?
一応、4Cという開発モットーがあります。「見てたのしい、買ってうれしい、食べておいしい、またほしい」です。メディアの方からそういう質問をよく受けるのでそれらしいことを考えなあかんなということで作りました。
企画部という部署で毎月営業担当者も交えながら商品企画の会議をします。そのあと飲み屋に流れてみんなでワイワイ言いながら考えています。
ふだんどんなことを考えているか?まあ、「今日はどこに飲みに行く?」ばっかりですね(笑)。ぼく自身も多くのネーミングに関わりました。「食ベルンです」もその一つです。

― 失敗例は。
思いついたら出してみるという開発姿勢なので、よく「千三つ」と言われますがヒットするのはそのくらいの確率です。
時計のG₋SHOCKを模した腕に巻き付けるガムを発売したのですが、これがまったく売れませんでした。ガムがだいぶ余ってしまったもんですから、これを何かに転用できないかと考えて生まれたのが「おくすりやさん」シリーズです。
飲み屋で知り合った大手の会社の人がオヤジギャグの好きな人で、飲み屋に配るためのお菓子を作ってほしいと頼まれて一緒に考えました。
今では中身のお菓子はチョコレートに変わっています。イケメン不足に「キムタック600」、「ドナイシトール」などのお薬をイメージしたチョコに処方箋袋もつけて、新地のママがバレンタインにお客さんへのプレゼントとしても使ってくれています。

「おくすりやさん」シリーズ(処方箋袋付き)
― ココアシガレットも梅ミンツもミニコーラも1個30円という価格を維持するための工夫は。
例えばミニコーラのラムネは粒の大きさを変えました。内容量は1つ当たり9グラムで変えていないのですが、1粒の重量を0.15グラムから0.2グラムに増やしたので粒数は減っています。こうすることで製造時間を短縮させることができます。
ココアシガレットは原料の乳糖が上がったため原料の見直しをせざるを得ませんでした。近くの幼稚園児に原料を変える前と後で味がおいしくなったかどうかを聞いて、「おいしくなった」と言われるまで改良を重ねました。

糖衣工場
― それにしてもココアシガレットは70年近いロングセラーです。生き延びる秘訣は。
今はネットの時代であっという間に広がっていきますから、話題性も大事です。ココアシガレットは禁煙の流れを受けて肩身が狭くなっています。WHOなどからもタバコに似せたものは作らないようにと“指導”を受けました。
それで商品誕生から60周年のタイミングでパッケージに「あなたの禁煙を応援します」というフレーズを書き加えました。禁煙応援グッズに生まれ変わったわけです。
去年は電子タバコに似せた「MyQOS」を商品化しましたが、クレームが入りまして。ミニコーラの一件が頭をよぎり、QをCに変えて「MyCOS」に改名しました。
そうしたら2月頃からツイッターでバズりましてね。ニュースでもたくさん取り上げられ、アマゾンの食玩部門の1位にもなりました。

「myQOS」改め「myCOS」。「2011年からオリオンはあなたの禁煙を応援します」のコメント入り。
― これからの目標は。
駄菓子は日本の文化です。その良さを世界に広げようと2015年に駄菓子メーカーなど18社で「DAGASHIで世界を笑顔にする会」を結成しました。インバウンドにも非常に評判がよく世界に通用するお菓子だと思っています。
「MyCOS」に舞妓さんのイラストをつけたのもインバウンドを意識しました。これからも怒られへん限りパロディ菓子を作り続けていきます。
そして「オリオンやったら許したるわ」という存在になれたらいいなと思っています。

常務取締役 企画本部長 高岡 五郎氏
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)
6月号で掲載した記事はコチラ
→笑ってもらってなんぼ、突き抜けたパロディで敵なし









