ラムネは日本の風物詩、 70年の伝統と遊び心で次世代へ

瓶の中でガラス玉が涼し気な音を立てる夏の風物詩「ラムネ」。国内に流通するラムネの約50%以上が、大阪市都島区で生産されている。

ハタ鉱泉の工場を訪ねると、繁忙期を目前に生産ラインがフル稼働。瓶にシロップを流し込み、そこに炭酸水が勢いよく注入される。

瓶を上下にひっくり返すことで中のガラス玉が落ちて密封され、元に戻すと充填完了だ。工場の中で瓶が観覧車のように回っているのは、昔から変わらない独特の製造工程によるもの。

1日約20万本が製造され、目視と人の手による厳重な検査の後、出荷に至る。

炭酸が弱いとガラス玉で栓ができないため、ラムネは強炭酸のみ。

清涼飲料水といえばラムネが主流だったが、昭和40年代に入ると、缶入りや王冠栓の瓶入りなど多種多様なソフトドリンクが参入。

それらに押されて販売が減少したことに加え、瓶を回収して洗浄し、再び充填して販売する方式自体も難しくなっていった。

代表取締役社長 秦 啓員氏

「銭湯や駄菓子屋など、回収してくれるお店がどんどん減っていきました。回収瓶は破損や汚れのリスクもあるし、何より重労働。先代の社長は『もうこの事業は畳む!』と口癖のように言っていました」と秦氏。

ペットボトル容器のラムネは、海やプールでも破損の心配がない。

起死回生のチャンスとなったのは、平成に入って自社開発したワンウェイボトル。炭酸の圧力に耐えながら軽量化できる最適なバランスを探り、製品化に成功した。

回収が不要となったことで販路は飛躍的に広がり、再利用によるリスクも解消。今では日本全国はもちろん、世界44の国と地域で販売されている。

輸出国の規制に合わせてシロップを調合。パッケージには「ラムネ」の日本語が。

海外生産ではなく日本からの輸出で対応しているのは、容器にも高い品質が求められるため。ガラス玉にほんの小さな傷があっても炭酸が抜けてしまうのだ。

自社ボトル開発を契機に、ラムネ専業メーカーとしてひた走ってきた同社。時とともに同業者は減りつづけ、気が付けばラムネ製造日本一の企業になっていた。

国内のみならず、海外への輸出でラインは一年中フル稼働

大阪の新しい名物を作ろうと、たこ焼味のラムネを作ったのは約10年前。以来、「変わり種ラムネ」として、キムチ味やラー油味、コーンポタージュ味など、味の想像ができないラインナップが揃う。

「変わり種ラムネ」味の想像がつかないものも。

「お蔵入りになったものも多いですよ。水ナス味は原価が上がりすぎてダメになりましたし、玉ねぎ味は原料をすりおろして絞る工程で涙が止まらないと工場からNGがでました。ドブの水味なんかもありましたね。開発の原動力?遊び心です(笑)」。

ラムネを知らない若い世代も増えてきているが、「これってどんな味?」と手に取ってもらうことでラムネが身近になればと考えている。

かつて全国に1,700~1,800社あったラムネメーカーも、今ではわずか十数社。

創業70余年のノウハウを詰め込んで、国内の多くの世代へ、世界へ、昔ながらの日本の味を届けていく。


(取材・文/北浦あかね 写真/内山光)

2019年06月06日
ハタ鉱泉株式会社
代表取締役社長  
秦 啓員氏
事業内容/ラムネなどの清涼飲料水の製造・販売

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