ものづくり

銅とアルミの境目に電気の未来を変えるミクロの技

2026.03.09

銅の価格高騰を受け、電気設備に使われる銅線のアルミ化が進んでいる。アルミは価格が比較的安定しているだけでなく、銅の約3分の1という軽さで、運搬や施工の面でもメリットがある。一方で、分電盤などの端末内部の回路には銅が使われることが多く、どこかでアルミと銅の接合が必要だが、アルミ電線をそのまま従来の銅端子につなぐと物性の違いによって電食や異常発熱を引き起こす可能性がある。

この課題の解決に新たな接合技術で取り組んでいるのが、創業90年の歴史を持つ冨士端子工業株式会社だ。社名の通り端子の製造を祖業とし、戦後からヒューズの製造も開始。1981年には日本初のガラス管ヒューズ全自動製造機を開発するなど、技術開発に取り組んできた。

その同社が着目したのが、大阪産業技術研究所が技術シーズとして活用を検討していた「摩擦撹拌接合(FSW)」という接合技術だ。FSWは、2種の金属の接合面に回転する突起物を押し当てることで、融解させることなく接合させる技術である。2017年にこの技術の社会実装に向けた両者の共同研究がスタート。従来のFSWで課題となっていた、2種の金属が混合することによる強度の低下や電気抵抗値の不安定化を抑えた「非混合FSW」の開発に至った。

この成果について、開発に携わった三輪氏は次のように語る。「2種の境界面にできる化合物層が薄いほど接合強度が高まりますが、非混合FSWはそれが約1ミクロンと非常に薄いのが特長です。その結果、圧延しても強度を保ちやすく、さまざまな製品への加工が可能になります。境界を電気が通る際の影響も抑えられています」。

現在は特許も取得し、複数の企業と連携しながら製品開発や市場開拓の可能性を探っている。さまざまな製品への応用が見込まれる技術だが、現状は主に2つの構想を描いている。ひとつは電力ケーブルなどで使用されるアルミ線と従来の電気設備をつなぐバスバー端子だ。同社では既に量産を開始しているFWという接合技術で製作したバイメタル端子でも対応することが可能である。

もうひとつは、圧延できる特長を生かし、電池のバスバー(電力を効率的に分配するための導電部材)への活用を模索する構想だ。リチウムイオン電池の電極には通常、ニッケルのメッキが施されるが、銅とアルミを接合したバスバーを用いることによってニッケルが不要になり、低コストかつ安定供給につながる次世代リチウムイオン電池の実現が期待されている。

これらの構想の実現に必要なのが量産体制の構築だ。「現在、接合から圧延、プレスによる型抜きまで一貫して対応できる生産設備の設立を構想しています。これが実現すれば、量産による実用化が進むと考えています」と三輪氏。営業として市場開拓を担う小川氏も「AIデータセンターや物流センターなど、大型施設ほどアルミ化のメリットが大きいとみています。幅広く商機を見出していきたいですね」と意気込む。

大手電機メーカーでテレビの開発に関わった実績を持つ三輪氏。ニーズとシーズの両面から開発を考えてきた経験が、非混合FSWを応用した製品開発にも生かされているという。その知見と、冨士端子工業が90年にわたって積み上げてきた経験とネットワークが融合し、「電気」の世界に新たなイノベーションが生まれようとしている。

左から、作東工場 第二製造課 主務 三輪哲司氏、営業部 部長代理 小川貴裕氏

(取材・文/福希楽喜)

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冨士端子工業株式会社

作東工場 第二製造課 主務 三輪 哲司氏
営業部 部長代理 小川 貴裕氏

https://www.fujiterminal.co.jp

事業内容/圧着端子・電流ヒューズ・温度ヒューズおよび関連製品の製造販売