【ビジネスチャンス倍増プロジェクト】刃こぼれしにくい“シンバル専用”切削刃物を開発
小出製作所の特殊な青銅材質のシンバル円盤は切削が難しくすぐに刃こぼれした。そこで新たな切削刃を求め、産創館の製造業のビジネスマッチングサービス「ビジネスチャンス倍増プロジェクト」で、マッチングを行なった。切削工具メーカーの東洋ツール工業が最適な刃、そして刃とホルダーを分離する刃物構造の提案により、生産コストの削減につながった。
小出製作所は、国産唯一のシンバルメーカー。市場参入から10年が経ち、「小出」ブランドは着実に知名度を上げつつある。数年前から、独自性を出そうと取り組んできたのがシンバル円盤に使う素材の開発だ。通常の円盤は銅に錫を20%混ぜた合金だが、特殊技術で錫の比率を23%にまで増やしチタンも加えた。完成したシンバルは他メーカーより音の立ち上がりが早く、余韻も長い。
だが難点は削りにくいこと。これまで厚みを調整するために使う切削刃物にダイヤモンドを使用していたが、先端がすぐに刃こぼれするのだ。原因は「円盤に焼き入れした時、表面にできる非常に硬い硬化層」と小出氏。マッチングナビゲーターに「刃こぼれしない切削刃を作ってくれるところはないか」と相談し、紹介を受けたのは、産業用の各種刃物を生産している東洋ツール工業。さっそく超硬、セラミック、ダイヤモンドなどの各種切削刃を円盤に当て、その中からやはりダイヤモンドがもっとも削れる可能性があることがわかり、ダイヤモンドメーカーを変更。また、刃物を長寿命化させるため、刃物とホルダーが一体型であったものを交換可能な分離式にし、刃物自体をすべての面が使用できる円形状にしては、とナビゲーターの東浦氏から提案があり、これを採用した。今年1月には試作品が完成。結果は「あまりに切れるので驚いた」ほど。従来、30分を要していた加工が5分ほどでできるようになったことに加え、刃物の寿命が長くなり、大幅に生産効率が向上、コストダウンに繋がった。
<マッチングまでの流れ>
2012年6月 小出氏からの依頼を受けたナビゲーターが切削工具メーカーの東洋ツール工業を紹介。
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2012年10〜12月 小出製作所を訪ね、各種刃物でシンバル円盤を切削し、ダイヤモンド刃が最適と判断。また、ホルダーと刃物を分離することで長寿命化できることを提案。
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2013年1月 試作刃を提供。抜群の切れ味で採用が決まる。
▲従来の切削刃物(左)と東洋ツール工業が開発した切削刃物(右)。
▲大阪産業創造館 東浦 利幸ナビゲーター (右) 株式会社小出製作所 代表取締役 小出 俊雄氏(左)
株式会社小出製作所
代表取締役
小出 俊雄氏
事業内容/金属板を回転させながら棒を押し当てて少しずつ変形させるへら絞り加工が本業。10年前からシンバル製造に参入した。外国製が占める中、唯一の国産ブランドとして注目を集めている。