昆布菓子一筋80年以上、愛され続ける秘訣
北海道で採れたこだわりの昆布を使い、甘酸っぱい味付けで、日本全国の老若男女から親しまれる『都こんぶ』。
そんなロングセラー商品や、ヒット商品『おしゃぶり昆布浜風』といった昆布を軸に据えたお菓子を企画・製造しているのが中野物産だ。
今では、全国区で圧倒的知名度を誇る同社のお菓子だが、全国展開には並々ならぬ企業努力があった。特に関東では、「こんな酸っぱいものは売れないよと、断られることも多かったと聞いています」── そう語るのは、長年にわたって同社を支える木村氏。
1953年に東京営業部が設立されると、創業者自ら営業部隊を率いて積極的に販売活動を行なったという。
「転機の一つと言えるのが、キオスク(当時、鉄道弘済会)での販売。“駅の売店に置いているお菓子なら安心”と、全国の問屋や小売店などが感じてくれたのではないでしょうか」と、木村氏は分析する。
さらに、人気タレントを起用したTVCMも後押し。『都こんぶ』の名は全国へと広まっていく。
順風満帆に見えるが、危機もあった。特に1969年、甘味料として使っていたチクロが使えなくなった際には、売上げが大きく落ち込む事態に。
「甘みというと“砂糖”が思い浮かぶと思いますが、砂糖の分子は大きく昆布には浸透しません。全社を挙げてチクロの代用となる成分を探索した結果、アミノ酸の甘味料にたどり着き、甘酸っぱい味を引き出すことに成功しました」と当時の苦労を振り返る。
現在は、昆布菓子の老舗メーカーとして、確固たる地位を築いている同社だが、看板と言える『都こんぶ』の味を時代のニーズに合せて変化させているだけではなく、噛むほど味が出る『おしゃぶり昆布』やコラーゲンを使った商品など次々とリリース。
安定にあぐらをかくことなく、時流に合わせたお菓子の開発や、パッケージデザインにも注力する。
人気商品になれば、競合が出てきてもおかしくはないが、同社は独走体制を維持している。その理由は1年に1度しか採ることができない昆布の“仕入れの難しさ”と、“製造における独自のノウハウ”。
「たとえば初期工程でいうと、昆布には砂利などの付着物がありますが、傷が入らないように人の手で丁寧に取り除いています。設備にも相応の投資をかけています」と自信をのぞかせる。
独自のノウハウとこだわりを強みに、今後も昆布菓子メーカーとして挑戦を続けていく。
(取材・文/仲西俊光 写真/石川泰三)