創業時の心意気を受け継ぐ、昔なつかしいアイスキャンデーの味
ときは食料不足の終戦直後。「女性や子ども達に、冷たくて甘いものを食べさせてあげたい」と考えた初代が、なんば戎橋筋で始めた商売はアイスキャンデー店。
1本20円で売られた「ミルク」「あずき」「パイン」3種類の味のアイスキャンデーは、またたく間に人々を魅了した。
愛らしい「ペンギン」と、南極ではなく「北極」を組み合わせたイメージも浸透。
以来74年にわたって同地に本店を構える「北極アイスキャンデー」は、「ココア」「抹茶」「いちご」など味を増やし、いまも変わらぬ材料と製法で1日6,000本、年間70万本のアイスキャンデーを製造している。
「初代の父が亡くなってからは母が切り盛りし、2005年に母から指名を受けた私が事業を承継。子どもの頃から手伝っていた店に通ってくださる昔からのお客様を大切にし、変わらぬ味を守っていくのが私の使命」と話す久保田氏。
2代、3代にわたって愛される昔なつかしい味の秘密は、白双糖(ザラメ)や北海道十勝産小豆などこだわりの材料と製法を守って、職人が一本一本手づくりしているから。
アイスキャンデーに使用している棒は吉野産のひのき。持ち帰り用の箱にドライアイスのスペースを確保するため斜めに刺した棒。包装袋や紙箱などのパッケージデザインも創業時からずっと受け継がれている。
とはいえ、歴史を守るだけでは商売は続かない。女性目線を大切にする久保田氏は、女性が何を求めているか常にアンテナを張り、時代に合った商品開発に取り組んでいる。大阪名物「ミックスジュース」味や、健康志向に合わせた「本くず入りシリーズ(柚子・濃茶)」なども好評だ。
夏のシーズンが終わって売上げが落ちる季節には、北海道十勝産小豆やクリームチーズを用いた回転焼きを販売。さらには、ペンギンをキャラクター化してオリジナルグッズを企画するなど、発信する姿勢も忘れていない。
シャリシャリとして後味すっきりの甘さが魅力の「北極アイスキャンデー」は、外国人観光客からの反応もよく、SNSで紹介されて徐々に広まっている。なかには7時間分のドライアイスを詰め香港まで持ち帰ったお客様も。
今後は海外へも目を向け、タイや台湾といった常夏の国で販売する計画もあるという久保田氏。「私達にとって一番大切なことは、お客様が喜んでくださること。昔なつかしい素朴な味のアイスキャンデーで、100年続く会社をめざします」。
(取材・文/花谷知子 写真/Makibi)