生産農家の想いと料理人の技、素材厳選「ごはんのおとも」
「生産農家さんのこだわり食材と、料理人の知恵と技術が詰まった関西の新しい手土産となるようなものを作りたくて」。飲食店の運営・プロデュースを行っている株式会社リッシュが手掛ける「ごはんのおとも専門 おともや」は、地元関西を中心とした生産農家から直接食材を仕入れて商品を開発している。
フレンチのシェフ出身である赤堀氏が、食材仕入れのため西日本を飛び回る中で見た農業の現場が、おともや開発の原点となった。「見渡す限りの広さでも、畑の売上げが年間数万円ということも。天候に左右されながら一年中休みなく体を動かして、ようやく収穫した作物が小さな傷やサイズを理由に破棄される。後継者不足も深刻で、なんとかこの現状を変えたいと考えたことがスタートのきっかけです」。
生産者の想いを受け止め、料理人としての知恵と技術でカタチに。もともと一緒に働いていた先輩シェフと共に専用の工房を構え独自のレシピを開発、すべて手作りで製造している。当初は日持ちと流通を考えてレトルトを検討したが、食感の再現が難しく、真空パックの冷凍に。商品を売ること以上に素材のよさを伝えたいという想いを優先した。
現在は全15種類のラインナップを展開しており、なかでも人気No.1は「“とろける” なにわ黒牛のすき焼き」。なにわ黒牛は唯一の大阪産銘柄牛で、仔牛の段階で選りすぐった黒毛和牛の雌だけが用いられる。口溶けがよく甘みのある脂、やわらかい肉質が特長で、2019年開催のG20 大阪サミット晩餐会で世界の首脳に振る舞われたことでも話題になった。
切り干し大根を加えることで、味の邪魔をすることなく脂を吸収させている。こうした食材同士の合わせ技も料理人ならでは。ごはんとのマリアージュを叶えるため、ほどよい味の濃さ、水分量を試行錯誤した。「素材にこだわり、手間暇を惜しまず作られているため価格設定は高めですが、しっかりと商品の背景を伝え、想いと付加価値を届けたい」と赤堀氏。
オンラインショップや駅のお土産店で販売する他、新たな取り組みとして、関西の人気ラーメン店「人類みな麺類」と「おともや」のコラボ店もスタート。クリアなラーメンスープと、おともやの商品を具材とした丼が好相性で、来店者の約1/3が注文する。「調理してすぐに食べていただけることも店舗提供の利点。お客さまの反応を肌で感じられるのも励みになりますし、その様子を生産者の方にも伝えています」。
いい食材がなければ、いい料理は作れない。「ごはんのおとも」を通じて、食材や産地の魅力、日本の食文化を発信していく。
(取材・文/北浦あかね)