お茶が進化!自分のために淹れるお茶を提案
ハンドドリップで茶葉の豊かな香りと味わいを引き出す新ブランド「GREEN GLASS Brew Tea」をはじめ、スナック菓子・からあげ・ケーキが食べたい人向けの「言い訳のお茶」、芋や栗菓子やスイーツのためのお茶など2020年より次々と発売する株式会社山城物産。
開発のきっかけはペットボトルやティーバッグが主流になり、急須でお茶を淹れて飲む生活スタイルが減ってきたこと。「主力取引先であるスーパーで茶葉の売場が減少し、直営店でもお歳暮などギフトの需要も減った。それにペットボトル用の安価な茶葉の需要ばかり上がり、大量生産できない茶農家が廃業に追い込まれつつあった。お茶を淹れる文化を守るためにも、急須より簡単に美味しく淹れられるお茶の新ブランドや商品開発をめざした」と代表の岡本氏。
その想いから新ブランドにはドリップ式を採用したが、ニーズを調査した際に消費者から出た「ティーバッグよりドリップ式のほうが、お客さまにお茶を出すときに高級感がある」との意見が商品化への後押しになった。急須とは異なるドリップ式でも成分が抽出しやすいように茶葉のカット処理や火入れ(焙煎)、配合など試行錯誤を繰り返し、水出しも可能に仕上げた。ドリッパーですぐに美味しい水出し緑茶やほうじ茶が淹れられる。
二煎目は日本茶とハーブの組み合わせを楽しめる新提案のセットも用意し、プチギフトとしても喜ばれるラインナップが完成した。しかし、発売予定とコロナ禍が重なり、販促計画が頓挫したことからクラウドファンディングに挑戦することに。目標の約400%を達成でき、手応えを得ることができた。
岡本氏は毎年社員全員と一日同行し、いろいろ話すことを大切にしている。ある社員の「とんかつ用のお茶があってもおもしろいのでは」との一言からスーパーでクロスセルできないか考え、「言い訳のお茶」や芋や栗のためのお茶のように何かに合う提案型お茶の開発につながった。新商品のコンセプトやブレンドは社員アンケートをベースにしている。2024年はお酒好きな茶師の提案から生まれた焼酎に合うお茶を発売する予定だ。
「ほっと一息つける、自分のために淹れるパーソナルなお茶を提案し、若い世代がリーフ茶を飲む機会を増やしたい。そのためにも販売チャネルの拡大が必要」とネット販売や貿易にも力を入れる。また、直営店の2階でお茶体験ができる書道教室やワークショップを開催したり、蔦屋書店などの書店で販売を行うなど、新たな顧客開拓に挑戦していく。
(取材・文/三枝ゆり)