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堺ブランド「昆布」×「塩糀」が生み出す調味料感覚のごはんのお供

2024.04.03

調味料感覚で使えるごはんのお供を開発したのは株式会社郷田商店。「塩糀昆布」は角切りや細切りが主流の汐吹き昆布を何度も刻み粒状にし塩糀の粉末と合わせた、まるでふりかけのような一品である。

遡ること10年前。「雨風さんから地元企業同士でコラボできないかと話をいただいたのがきっかけです」と代表の郷田氏。雨風さんというのは“糀屋雨風”として、長く糀づくりを行う堺市内の老舗企業、株式会社雨風のこと。塩糀は液状タイプが一般的だが、雨風は粉末タイプを開発しており、それが郷田商店の昆布とマッチした。

塩糀昆布はプレーンと梅入りの2種類。今後、味のバリエーションを広げていく計画もある。

風味がある昆布と食材の旨味を引き出す塩糀。そのマッチングは絶妙で、パスタ、揚げ物、スイーツなどさまざまなレシピに使われる。なかでも郷田氏のおすすめは卵かけごはん。「醤油の代わりにこれをふりかけ少し時間を置くと、糀の効果で旨味がでるのでまろやかでおいしいですよ」。実はこの塩糀昆布、販路の多くはアパレル系企業だという。アパレル系企業が展開する食品や雑貨を扱う有名ブランドのショップに注目の食材や調味料として置かれている。

「昆布といえば和食ですが、洋食にも使ってもらいたかった」と郷田氏が話すように、ボトルには“Japanese Classic Kombu Salt”の文字を入れレシピのイメージを膨らませた。「雑貨店を見て回るのも好きで、この瓶を使ってみたかったんです」と、デザインが郷田氏自らのアイデアであることを明かす。もちろん見た目だけではなく原材料の質にもこだわっている。「この塩糀昆布には北海道の道南産の天然の真昆布を使っています。すごくいい昆布ですよ」。

手加工の技術が生きる“おぼろ昆布“と〝とろろ昆布”。

もともと同社はおぼろ昆布やとろろ昆布などを業務用食品として手加工する企業。バッテラ寿司に使う削り残った昆布の芯の白板昆布も同社の主力商品である。江戸時代、上方の食文化と刃物の技術が相まって手すき昆布の名産地として知られた堺だが、今は技術を伝える後継者不足のため加工業者が激減している。戦前は140軒以上あった昆布加工業者だが現在、堺昆布加工業協同組合の組合員は5社、そのうち手加工をしている業者は同社を入れて3社になった。また、気候変動の影響もあり、昆布自体を取り巻く環境も変わってきた。「手すきは手間がかかるので一日に多くを加工できるわけではない。しかも道南産の真昆布の生産量が減っているとなると注文を受けても原料調達が追いつかない」というジレンマもある。

とはいえ昆布は日本人の繊細な味覚を育んできた日本の食卓に不可欠な食材。「なくすわけにはいきません。手すき加工は伝統産業でもありますし、お客さまが必要としてくれる限りは続けたい」と事業の明かりを灯し続ける覚悟を見せる。

代表取締役 郷田 光伸氏

(取材・文/荒木さと子)

株式会社郷田商店

代表取締役

郷田 光伸氏

https://www.godashoten.com

事業内容/昆布製品の手加工と販売