こってり味噌仕立てがおかわりを呼ぶ国産牛のどて焼きを、いつでもどこでも
牛すじ肉をじっくりと煮込んだ「どて焼き」。味噌の甘さと絶妙に絡み合い、ごはんが進む「大阪人のソウルフード」だ。本場の味をいつでもどこでも楽しめるレトルト食品として開発したのが大阪市平野区のマルヨ精肉店。創業は昭和39年で、代表の與那嶺氏が幼少期に親しんだ味がベースとなっている。「子どものころ、学校から帰ると店のストーブの上にどて焼きの鍋が置かれていて。一日炊いて煮詰め、うまみが凝縮された味を再現しました」。
開発のきっかけとなったのは「ついついひらの」への出店。有志で近隣店舗が協力して月に1回開催され、2024年3月で117回目を数える地元の名物イベントだ。通常の扱い品目以外のものを販売しようと、毎回趣向を凝らしたメニュー開発に取り組んでおり、どて焼きもその一つ。当初はパック詰めした冷蔵品として販売していたが、転機となったのはギフトショーへの出展。商品に対する手応えを得るも、日持ちしないことがネックで、他府県への流通を考えると常温保存は外せない条件だった。小ロットでレトルト化に対応できる工場を探し出し、試作の日々がはじまった。
一般的なレトルト加工は120℃以上で加熱され、一年以上常温保存できる。マルヨ精肉店のどて焼きはたんぱく質の変性を抑えるため108℃で加熱。保存可能期間は半年と若干短いが、味わいと食感を優先させた。店内で加工される牛すじ肉は、煮込んだときに溶けてしまわないよう、程よく赤身を残してカット。国産牛を用いることもこだわりで、入荷した肉の個性にあわせて下茹での時間を変えるなど、毎回レシピを調整している。
肉のおいしさと調和する味噌も厳選された逸品だ。地元平野区の村田味噌が農林水産大臣賞を受賞した白味噌、赤味噌を独自にブレンド。「作るなら妥協はしたくなかった。万人受けするよりも『絶対にこれでないとダメ!』と言ってもらえる商品にしたかった」。
肉の旨味が味噌に溶けだし、具だけではなく味噌も主役級のおいしさ。とろりとした濃厚な味わいで、温かいごはんの上にかけて丼にするもよし、晩酌のお供によし。百貨店バイヤーの目に留まり、お歳暮コーナーで期間限定にて販売された実績も持つ。現在は、店頭やイベントのほか、オンラインショップ、道の駅が主な販路だ。
味へのこだわりとレトルトの手軽さで、大阪下町の味が全国に広がっている。
(取材・文/北浦あかね)