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【長編】大阪発 国内唯一のシンバルメーカー めざすは世界市場

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60年余に及ぶ金属加工のノウハウを生かし、10年前からシンバルの生産に乗り出した。海外メーカー製のシンバルが市場を独占する中、国内唯一のメーカーとして新素材を使った音質の追求と耐久性向上で市場に風穴を開けようとしている。シンバル生産に乗り出した背景と、海外メーカーに立ち向かう心意気を小出氏に聞いた。

―どんな金属加工を手がけているのか?

昭和22年の創業以来、へら絞りと呼ばれる金属加工を手がけてきました。回転させた金属に棒を使って圧力をかけ、変形させる加工法です。今では棒がほとんどローラーに代わっています。戦後間もない頃でものがない時代でしたから、材料さえ手に入れば、洗面器からやかん、鍋までなんでもつくっていたようです。私が入社したのは1971年。当時はカメラのフィルムを引き伸ばす時に使うランプカバーの製造で忙しくしていました。その後、業務用洗濯機向けステンレス部品や鉄道車両の空気バネなども多くつくりました。ドラムをつくることになったのは、15年ほど前のある日、ドラムを趣味にしている社員に、うちでかつてシンバルを造っていたことを話したのがきっかけでした。日本にはシンバルメーカーがないので「それなら国内唯一のメーカーとしてもう一度つくってみよう」という話になったのです。

―昔シンバルをつくっていた?

1960年代のことです。当時、日本でグループサウンズが大流行し、バンドを始める人が増えました。そのブームに乗じる形で、楽器メーカーからの依頼を受けて真鍮(しんちゅう)製のシンバルを製造していました。真鍮は銅と亜鉛の合金で、よく伸びるため加工しやすい特長を持っています。ただ、柔らかすぎてシンバルの質としてはひどいものでした。当社のようなにわかメーカーが当時はたくさんあったようです。今でも当時使ったことがある人と話をすると「あの情けないやつな」と言われます(笑)。ところが家電や車両部品などの仕事の方が忙しくなるにつれていつの間にかつくらなくなっていきました。

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―再び製造するにあたって何から着手したのか。

そもそも本格的なシンバルを造るのに何を素材に使えばいいのかさえ分からなかったので、仕事が休みの日に研究するところからスタートしました。海外製のシンバルを買い、銅に詳しい親戚に頼んで素材の分析をしてもらうと、銅の中にすずが20%入った合金、すなわち青銅だということが分かりました。ところが、国内には高スズ青銅板をつくっているメーカーがどこにもありません。インターネットで調べていくうちにドイツメーカーから材料を仕入れることができました。ただしすずの含有比率は8%ほどで音楽のジャンルとしてはロック向きでした。
ハンマーでたたいてから表面を削るという加工はわかっていたので持っている設備で間に合うだろうと思ってたんですが、そうはいきませんでした。青銅を焼く炉やハンマーでたたく機械など、少しずつ設備を整えていきました。

―うまく音は出た?

叩くことで金属組織が変わり、それが振動に影響を与えて音が鳴ります。はじめはプレス機で押して凹ませていたのですが、それでは良い音が出ませんでした。そこでハンマーマシンをつくりました。調整が難しかったですね。ハンマーの叩く強さ、形状で音は変わります。小売店やプロの奏者の方に音を聴いてもらいながら微調整をかけていきました。

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―販路は?

まず「小出シンバル」のホームページをつくり、ドラム専門雑誌に広告を載せて「国内唯一のシンバルメーカー」「made in japan」という言葉が目を引くデザインにしました。将来的には世界への進出も考え、ロゴマークも漢字にしました。それで当時、大阪に1店しかなかったドラムの専門店にも置いてもらい、そのほぼ同時期に、東京のドラム専門店にもおいていただくことになりました。その後、打楽器専門卸の会社から「うちで扱いたい」と声をかけていただき販売をお任せしています。スイス製のシンバルを使っていたあるドラム奏者の方から「日本製があるなら使いたい」とお話をいただき、求めている音を出すための試行錯誤が続きました。そういったプロの方からの依頼で今のシリーズが生まれています。シリーズごとの違いは、ハンマーの先の丸みの形状などの違いにあります。皆さん演奏される方は求める音の好みが違うので、そのリクエストに応えているうちに今では7シリーズまで増えています。8年前からトルコのシンバルメーカーから世界のシンバルでは主流のすずを20%含む青銅が入手できるようになったことで音の幅も広がり、クラシックの交響楽団などにも使っていただけるようになりました。

―世界のシンバルメーカーとそん色ない製品ができるようになった?

同じ材料を使っているし、加工は基本的に叩くというシンプルな工程なので、同じ質のものを造っているという自負はあります。ただ、同じようなものを造っていても、すでにブランド力を築いている海外製にはなかなか勝つことはできません。特に昔の真鍮シンバルを知る人は、「日本製のシンバルは質が悪い」と思い込んでおられる人もいます。そこで既存のシンバルとは違うものを出せるように材料の研究を進めています。
一昨年、あるメーカーにお願いして、すずの比率が23%でそこにさらにチタンを加えた新たな材料の開発に成功しました。そのメーカーが特許を持つ真空状態でしか鋳造することができないものを大気中でつくる技術を用いて出来上がったもので、どこにもまねができません。その材料を使ってつくったシンバルは、叩いた後の音の立ち上がりが非常に速いのが特徴で、初めに叩いた音が判別できないくらい“シャーン”という音が鳴って、それが長く続きます。そこでこの材料を使った製品を「センシティブ・シリーズ/クラシック・シンバル」として売り出しています。今のところ特にブラス(金管)バンド(吹奏楽)向けに好評でよく出ています。
また、私の経験上、すずの配合が多いと硬く丈夫になるなことも分かっています。今後、大学にお願いして疲労試験をおこなっていく予定です。

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―産学連携でシンバルの研究を進めていく?

現在大学の協力を得て一緒に研究をしています。
ハンマーマシンで叩き終わったシンバルはその時点では、周波数で見る限り整ってはいませんが、その後の切削工程と音溝工程を経ることで整っていきます。なぜそうなるのかはまだこれからの研究課題です。1枚の金属を叩くだけなのですが単純なようで奥は深いですね。
これからも今までと同様コツコツと研究を進めながらお客様のニーズに応えていきたい。いずれは世界最大のシンバルメーカーであるアメリカのジルジャンに負けないメーカーになるのが目標です。

2013年04月10日
株式会社小出製作所
代表取締役  
小出 俊雄氏

創業:1947年

事業内容:家電、車両部品などのスピニング(へら絞り)加工を行う一方で、10年前からシンバルの製造も始めた。

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