常に新たな“金鉱”探し 保険比較サービス業界をけん引
60社を超える保険会社が販売する数百に及ぶ商品の中から自分に合った保険選びをサポートする窓口を店舗、Webで展開する保険比較サービスの草分け。社長の濱田佳治氏は大阪の大学を卒業後、証券会社に勤務していたが、父親をがんで亡くした時に保険のありがたさを痛感したことがきっかけで保険代理店を大阪で創業した。
個人向けの販売に当たってPRの手段として選んだのがチラシのポスティング。契約まで至る確率をもとにポスティング費用に対して保険会社から得られる手数料収入の投資効率が高いことを確信し、ポスティング網を全国に構築。規制緩和で代理店が複数社の保険商品を扱えるようになったことも追い風となって業績は順調に伸び、2002年には大阪証券取引所ナスダック・ジャパン市場(現JASDAQ)に上場を果たした。
だが、ネットを使ったサービスが拡大する一方で店舗の生産性が落ち始める。急拡大させた約200店を数年で40店ほどに減らす荒療治の中で様々な苦汁をなめた。一方でWebサービスを整え、再び成長軌道に乗せる。「経営は損切り、というのが社長の美学。常に先を見ながら次の金鉱を探し、タイミングを逃さず事業のモデルチェンジをしてきた」と櫛引氏。
「情報量が多様で複雑な保険比較サイトは小さなスマホ画面には向かない」との定説を覆し、使いやすいサービスをスマホ向けに構築。1年半前に1%だったスマホ経由の資料請求者が30%にまで届こうとしている。「保険市場」サイト経由で契約に至った保険について、元受けの保険会社から再保険をかけてもらう業界初のビジネスも始め、フロー中心の代理店手数料に加えストック型の再保険料収入の2階建てで収益安定化を図る。また、展開する22の直営店は今後オフィスビルの12店に集約し、高級感漂う落ち着いた空間でコンサルティングが受けられるようにしてWebサービスとのシナジーを図るなど、矢継ぎ早の戦略で業界をけん引し続ける。
現在、首都圏2店舗に対し関西圏は9店舗を展開。「社長の濱田は東京で2日続く予定があっても、2日に分けて日帰り出張にするほど大阪が大好き。東京で業界にどっぷりつかっていないからこそ見えてくる視点が新たな発想を生んでいる」と櫛引氏は分析する。今後は現在300人の社員体制を増やすことなく量より質の経営を重視し、めざすは「千年続く会社」だ。
▲使いやすさを考えた保険市場のスマホ向け画面。
▲200を超える保険商品を比較することができる。
http://www.hokende.com/
▲本社ビルにある「保険市場」の店舗では静かで落ち着いた環境の中でコンサルティングが受けられる。
▲多くの女性が活躍する。一昨年、30代前半の女性社員が執行役員に就任した。
▲常務執行役員事業戦略部長 櫛引 健氏