【飲食店開業への道】staubで炊き上げた北欧風味が奏でる絶品ごはんの魅力がたっぷり詰まった「FIKA」とは
泉佐野市のJR東佐野駅から徒歩約7分。静かな住宅街に佇む白い平屋建てのカフェ「FIKA(フィーカ)」は、スウェーデン語でティータイムという意味。「大切な人と食事やお茶をしながら会話を楽しんでほしい」と西岡氏が2019年にオープンした自宅兼カフェだ。
シンプルな外観に庭の木々が美しい店舗前には駐車場を完備。大きな窓を設けた明るい店内では、北欧テイストのテーブル席・照明・食器・テキスタイルなどが居心地のいい空間を生み出している。
カフェ経営は高校時代からの夢だったという西岡氏。大学卒業後は大手料理教室で講師などを10年間務め、独立後は大阪市内の自宅マンションで料理教室を5年間続けた料理好きである。
結婚を機に東佐野にカフェをオープンしたのは、「知り合いの不動産屋さんから、たまたま紹介された土地を気に入って」とのこと。当初希望していた大阪市内では、金額的に手が届く物件に出合えなかったという。
予約で埋まるランチタイムは9割以上が女性客。地元の食材を使った月替わりメニューに付く、「五つ星お米マイスター」が選ぶお米を、鋳物ホーロー鍋「staub(ストウブ)」で1人分ずつ炊きあげるご飯が人気だ。
「広告費はゼロ。Instagramで宣伝してもらえ、それが広がっているようです。ありがたいことですね」。「カフェ経営は道楽?」なんて言われることもあるが、「もちろん稼ぎたいと思ってはじめたこと。でも、食材や調味料にこだわるコンセプトを掲げて実践しているので、儲けはほとんどなし」と打ち明ける。
コロナ禍を乗り越えて来店者が増えたいま、自分の好きなこと、やりたかったことができる満足感はある。しかし、毎朝5時半から仕込みをして11時の開店を迎え、その後夕方まで食事の提供、片付け、買い出しと体力勝負なのが現実。「カラダは丈夫なほうですが、この労働を長く続けるのは厳しい。あと3年は続けると周りには言ってますけどね」。
想像以上に体力がいるカフェ経営で実感したのは、同じ方向を見て、力を貸してくれる仲間の必要性。「私はスタッフに恵まれたのでこれまでやってこられた。カフェ経営を1人でやろうなんて思わないほうがいいですよ」とアドバイスする。
とはいえ、「ディナー営業を復活したい」「2店舗目を出す」「調理道具を扱うビジネスをする」など、やりたいことは頭にいろいろ浮かんでくる。そして、「FIKAのスタッフが働きやすい環境をつくるのはもちろん、今後事業展開をするなかでも女性が輝いて働ける場所を提供したい」という思いは強くなるばかりだ。
(取材・文/花谷知子 写真/福永浩二)
【 立地選定 】
結婚を機に大阪市内で自宅兼カフェが開ける物件を探したが、金額的に手が届かないものばかり。知り合いの不動産業者からたまたま紹介された古家付きの土地200坪を購入してイチから建築することにした。現地近くに夫の実家があった上に、自分の出身地が隣町というご縁もあった。
【 店舗デザイン・設備 】
社会人になり、温かみのあるデザインや実用性に魅かれて買い求めた家具や食器がすべて北欧製だった。調理道具にもこだわりがあり、自分が好きなものをレイアウトしたら北欧風カフェに。カフェの開業資金としては1,000〜1,500万円。自宅マンションが売れたので借入れなし。
【 開業までに要した期間 】
開業まで2〜3年。結婚を機に、2人で暮らす自宅とカフェが開ける物件を探すだけで2年ほどかかった。
【 「あきない虎の穴」担当者からのコメント 】
当時のカリキュラムで実施していた1日限定の模擬店でカフェ業態を出店し、過去最高の100人以上の来店で15万円以上売上げた女性のみのチームの中心メンバーだった西岡さん。料理教室の先生だったということもあり、そこで出された料理も本格的でしたね。卒業後は調理器具のお店で働きながら物件を探していると聞いていましたが、最終的に自宅兼用でお店を出すと聞いて、いいところに落ち着いたなと。わざわざ行くような場所ですし、自分のペースでゆっくりと、というスタイルも西岡さんに合っていると思います。(大阪産業創造館 創業支援チーム 浜田 哲史)
【 あきない虎の穴 】https://www.sansokan.jp/tora