Bplatz press

【飲食店開業への道】独立から15年、2つめの店舗で掴んだ「等身大の経営スタイル」

2024.12.11

古い街並みが残る中崎町。細い路地に入ったところに、築110年の民家を改装した店舗が現れる。ゆったりとした時間が流れるイタリアンビストロは、オーナーの鳥越氏にとって2つめの店舗だ。路線の違う2つのお店を経営することで、ようやく、心地よいスタイルにたどりついた。

鳥越氏の前職は、公務員。飲食業での独立を決意したのは37歳の頃だった。「深夜まで続く激務と、成果が給与に反映されないもどかしさ。安定はしていても、先がない。残りの人生を賭けることができなかったんです」。役所勤めの傍ら週末はカフェスクールで学び、大阪産業創造館による飲食店開業のためのプログラム「あきない虎の穴」にも参加。店舗の運営はもちろん、経営について学んだ。

代表 鳥越 芳幸氏

自己資金1,000万円に加え、融資が1,200万円下りることになり、2009年に開業。大阪市西区江戸堀にイタリアンバールをオープンした。だが、順風満帆とはいかなかった。鳥越氏はバリスタであるため、シェフを雇う必要があった上、オフィス街の需要に応えるべく朝7時から深夜26時までの長時間営業。スタッフの確保がネックになった。「内外装を建築デザイナーさんに依頼して、思い描いていた理想をカタチにしたけれど、ちょっと大きすぎました。自分ひとりでできることに立ち返って、再起することにしたんです」。

現在、営む「本庄レトロ 燈」は約1年間の充電・準備期間を経て2014年にオープン。「特別感のあるお店より、普段着感覚のお店」へと一転。従来とは正反対ともいえるコンセプトでの再スタートだ。「内装は大工さんの時間がある時に工事をしてもらうことで、予算を抑えました。メニューはシェフを雇わず自分でできるものに絞って、和とイタリアンを融合したメニューを展開することに」。

飲食店の開業に必要なのは、困難にめげない強い想いと自己資本だという鳥越氏。資本金を蓄えていなければ融資もままならず、やりたいことを始めるのは難しい。軌道修正や撤退など、厳しい状況も強い想いがなければ乗り切れない。ビジネスにつきもののアップダウンを経て、「燈」は今年、オープン10周年を迎えた。常連客同士が気さくに交流する「地域の居場所」として育っている。「今後の目標は、できるだけ長く続けること。誰かに終わりを決められるのではなく、自分次第で仕事を続けていける。そのことがとても嬉しいですね」。紆余曲折の15年を経て、等身大の経営スタイルを見つけた鳥越氏だ。

(取材・文/北浦あかね 写真/福永浩二)

【 開業資金 】 2,200万円
自己資金1,000万円、融資額1,200万円

【 立地選定 】 
1店舗目はオフィス街、2店舗目は長屋の残る下町

【 店舗デザイン・設備 】 
大工さんと二人で古い長屋を改装

【 開業までに要した期間 】 
サラリーマンから独立までの準備期間は約2年、2店舗目の開業準備は約1年

築105年の長屋を改装。梁などの構造材や建具を残した味わいのある空間。

【 「あきない虎の穴」担当者からのコメント 】
「虎の穴」に参加された15年前に、「公務員やめるんですか?」って言ったのをよく覚えています。当時受入店だった神戸の有名なカフェバーで店舗運営を体験し、卒業して割とすぐに開業されたので、かなり計画的に動かれていたなという印象です。1店舗目は実習に行ったお店に近い、オシャレでスタイリッシュなイタリアンバールでしたが、2店舗目の町屋イタリアンの方が現在の鳥越さんの雰囲気に合ってますね。15年前より今の方が楽しそうで断然いいと思います(笑)。(大阪産業創造館 創業支援チーム 浜田 哲史)

r0039825

【 あきない虎の穴 】https://www.sansokan.jp/tora

本庄レトロ 燈(あかり)

代表

鳥越 芳幸氏

https://www.retroakari.com

事業内容/イタリアンバールの経営
座席数/24席
開業日/2014年9月