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オーダーに応え続ける姿勢が紙の可能性を切り拓く、ヨシモリ株式会社の挑戦とは

2024.04.15

日常にあふれる「紙」は、種類や用途によってさまざまな表情を見せる。例えば高級品を入れる紙箱は鏡のような金属光沢の紙を使用することが多いが、この光沢を生む技術のひとつが、紙とアルミホイル、PETアルミ蒸着フィルムを貼り合わせる「貼合」と呼ばれるもの。この技術を120年以上にわたって磨き続けているのがヨシモリ株式会社で、貼合加工から着色、粘着加工、断裁・スリットなどの仕上げ加工まで一気通貫で対応できるのが強みだ。同社の製品ラインナップを見れば、紙が生み出す表情に無限の可能性を感じることができる。

創業は1900年。アルミ箔を貼り合わせた加工紙の製造に始まり、長い歴史の中で技術の幅を広げ続けてきた。グラビア印刷にも定評があり、色のバリエーションも豊富。例えば「金色」でも同社の色見本帳には数十種類のラインナップがあり、色も質感も自在に操る技術力が見て取れる。

金・銀・メタル・パール系など幅広く対応している。

同社が技術力を高め、製品の幅を広げてきた背景には「受注生産」のスタイルがある。これまでさまざまなジャンルのメーカーから化粧箱や紙パッケージの依頼を受け、そのたびに新たなオーダーに応えてきた。特に同社の対応力を鍛えたのはデザイナーからのオーダーだという。「デザイナーさんは色へのこだわりが強く、『まだ世の中にないものを生み出したい』という思いが根底にあるので、既存の技術では出せない色や質感を要望されることも多かった」と射水氏は語る。

しかし、簡単に「無理」とは言わないのがヨシモリだ。デザイナーからの感覚的な言葉でのリクエストに応え続けてきたことが、現在のユニークなポジションにつながっている。それを示す例として興味深い2つの商品がある。ひとつは「クニメタルコグチ」で、紙の断面(小口)もカラーになっているのが特徴のシリーズ。デザイナーからの要望で生まれたこの商品は、通常は素材の色がそのまま出てしまう断面もカラーになっていることで、新たなクリエイティブの可能性を生み出している。

もうひとつは独特のムラを生かした質感が特徴の金銀洋紙「コズピカ」。通常、金銀の紙に求められるのは“美しさ”だが、これは「ロックでパンクな金銀の紙が欲しい」という前代未聞のリクエストから生まれたものだ。「さまざまなデザイナーさんからのオーダーに応えるため、できないことに挑戦し、そのたびに技術が広がった」と射水氏は振り返る。

独特のムラを生かした質感が特徴の「コズピカ」。

もうひとつ、同社の競争力の背景として忘れてはならないのが「品質管理」への高い要求だ。同社の得意先はハイブランドの化粧品メーカーをはじめ、高級品を扱う企業が多い。そのため箱の品質に対する要求も厳しく、少しの傷や色ムラにも細心の注意を払い製造している。

「光沢のある紙は、普通の紙よりも傷が目立ちます。普通なら気づかないような傷でも返品対象になるので、材料の仕入れ段階から加工プロセスまで品質管理には磨きをかけてきました」と射水氏。検査機器のアップデートと人材育成の両輪を回すことで高いハードルを乗り越え続けてきたという。

こうして加工紙の分野で独自のポジションを築いてきたヨシモリが今、目を向けているのが端材の活用だ。どうしても生産課程で発生する従来産廃処理をしていた端材や、検査機で取り除かれた端材も発生する。社長からも「何とか端材を活用できないか」と悩む声が上がっていたが、この悩みの種が「キラキラブロック」という果実を生むことになる。

さまざまな形をつくることができる「キラキラブロック」。

キラキラブロックは立方体の紙ブロックを組み合わせてさまざまな形が作れるおもちゃで、プロダクトデザイナーと一緒に端材を開発資材として取り組む中で生まれたものだ。内蓋を差し込んでブロックどうしをつなげる構造なので、何度もつなげたり離したりできる。「子どもの発想力を伸ばす」と人気に火がつき、ワークショップを開けば大人も子どもも夢中になって遊び続けるという。2019年にはホビー産業大賞の経済産業省 製造産業局長賞を受賞、今年2024年にも京都インターナショナルギフトショーおみやげコンテスト審査員特別賞を受賞した。ブロックをつなぐ構造については特許も取得している。※商品に端材は使用していない。

「今後もお客さまからの要望に応えることで技術の幅を広げ、オリジナリティのある紙を生み出していきたい」と語る同社の進化はまだまだ続く。端材を活用した新たな価値創出にもさらに力を入れ、高品質なものづくりと環境保全を両立する道を探っている。120年以上も進化を続けてきたヨシモリの未来の姿は、紙の光沢と同様にキラキラと輝いているに違いない。

営業課長 射水 篤氏(左)、営業部 宮本 晃平氏(右)

(取材・文/福希楽喜)

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ヨシモリ株式会社

営業課長 射水 篤氏
営業部 宮本 晃平氏

https://www.yoshimori.co.jp

事業内容/印刷用金銀ホイル紙、蒸着紙、着色加工紙、粘着紙の製造販売