Bplatz press

エコでエシカル、北欧生まれのウッドクロッグを日本に

2024.09.24

ウッドクロッグは、150年以上前から北欧で愛されてきた履き物。⽊製底と天然⽪⾰でつくられるシンプルな構造で、泥や⽔から⾜を保護し、農場や牧場、鉱⼭や沼地での作業にも用いられてきた。

木を削り出したソールが足裏にフィットし、歩行や作業時の体のブレを抑えてくれる実用靴だが、ヒッピーカルチャー全盛の1970年代の欧⽶で、ファッションアイテムとして脚光を浴びた。

株式会社マレットは国内では珍しいウッドクロッグ専門の⼯房。婦⼈靴メーカーで20年以上勤務し、チーフデザイナーとして国内外を飛び回っていた村⼭氏が、2014年に独立し靴のデザイン会社としてスタートした。

もともと大阪市生野区は「ヘップサンダル」と呼ばれるつっかけの製造者が多いエリア。幼少期から、ものづくりや商店の仕事を間近で見て育った村山氏は、慣れ親しんだデザインの世界だけにとどまらず、自らも靴づくりに挑戦することを決意。週末ごとにセミナーや勉強会に出掛け、靴づくりの基礎を学んだ。「トレンドの靴も素敵ですが、履いていて心地よく、自分自身がよろこぶ靴をつくりたい。そう思った時に、クロッグに行き着いたんです」。

代表取締役 村⼭ゆか氏

村山氏とクロッグとの出会いは10代後半。留学先のロンドンで、真っ⽩な一足との出会いがきっかけだ。以来、プライベートでずっと履き続けてきた。自然素材を用いているため、古くなっても味わいがあり、どこかレトロで可愛らしいデザインは流行に左右されない普遍性がある。 

木の特性で、夏はサラッとした肌触りで冬はほんのりとした温もりを感じられる。⾜裏に⼼地よく、⼀年中快適。

だが、実際につくるとなると当初は難航したという。クロッグの木底が日本にないためだ。手づくりして試行錯誤する傍ら、木底を卸してくれる会社を世界中から探し、スウェーデンの工場を見つけ出した。

⽊と⾰の持つ調温・調湿作⽤を活かしたウッドクロッグ。素材の経年変化を楽しみながら⻑年履くことができる。

「メールでのやりとりの中で、クロッグを日本で根付かせるのは自分の使命だという想いも伝えました。コロナ禍で渡航制限があった時期ですが、仕入れた木底を使いながら、オンライン通話で仕上げの細かな部分まで教えてもらったことも」。それから2年後の2023年、ようやく現地の工場を訪ねることができた。スウェーデン滞在中は早朝6時から工場へ、少しでも多くの経験と知識を吸収しようと奔走した。

叔母が営んでいた文房具店を改装した築80年のショールーム兼工房。時の重みと味わいのあるやさしい空間。

本場で学んだ伝統⼯法を持ち帰り、自社工房で丁寧にハンドメイド。国産材や日本独自の染料、和柄ファブリックなど日本独自の要素を加えての商品展開もスタートした。今後は、フィッティングやインソールのカスタマイズ、オーダーメイドにも注力する。

約98%が土にかえる素材でつくられるマレット社のウッドクロッグ。履く人にもつくり手にも、環境にもやさしい世界を叶えていく。

(取材・文/北浦あかね 写真/三原李恵)

株式会社マレット

代表取締役

村⼭ ゆか氏

https://mallet-shoes.com

事業内容/ウッドクロッグの企画・製造