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【其の十四】衣料メーカー アイトス株式会社のBCPは生産体制の分散化、BCPの取り組みで既存のリスク対策を強化

2024.01.16

自然災害や感染症、セキュリティ事故などへのリスクマネジメントの一策として策定する企業が増えているBCP(事業継続計画)。重要なのはわかるけれど、実際どうやって作ったり使ったりするの?とわからないことだらけな方も多いハズ。このコラムではそんなBCPの策定・運用に取り組む大阪の中小企業のエピソードをご紹介します。

【其の十四】
衣料メーカーのBCPは生産体制の分散化、
BCPの取り組みで既存のリスク対策を強化

ワーキングウェアやオフィスウェアを製造販売するアイトス株式会社。国内に本社を含めた8拠点を持ち、海外には中国、ミャンマー、ラオスなどに生産工場を持っている。同社がBCPの必要性を感じたのは新型コロナウイルス感染症が流行りだした頃。感染拡大する中、いざという時の事業継続について考え始めた。

当時、既に緊急事態宣言が発令されていたため、同社は計画書の策定と社内の対応を同時並行で進めた。たとえば電子回覧板やメールを活用した全拠点での情報共有、テレワークの導入、社内の一斉清掃と消毒の徹底、密を避けるための社内レイアウトの変更など。それぞれの対策を着実に行ったこともあり、業務が大きく滞ることなくコロナ禍を乗り切れたという。

その間、BCPの策定は総務人事部が主導して行っていたが、担当者の藤井氏は「そもそもBCPには防災訓練、避難訓練というイメージしかなく、事業を継続していくための計画という考え方を理解するのに時間がかかりました」と話す。

とはいえ、ことさらBCPを意識しなくても、企業の多くは事業でのリスク回避をしているもの。同社も数年前から生産面と物流面でリスク分散を図ってきた。たとえば海外の生産拠点はどこでなにが起こるのか国内以上に予測が難しいため、製品ひとつの品番につき二か所以上の工場で製造を続けてきた。ここに事業継続の考え方が加わり、一国内での分散だけでなく、複数国をまたいだ製造の分散体制の確立に取り組んでいる。また、国内では大阪と群馬県の高崎に倉庫を持ち、同じ製品を2か所に分けて置くようになった。材料の確保やコストバランスなどを考えながら、有事の際にも安定した供給ができるよう、取り組みを続けている。また、製品の受注を長くFAXで行い紙を見ながら入力作業を行っていたが、コロナ禍を機にデータ受信に切り替えクラウドで共有できるようにしたことで、リモートワークの導入や本社以外の拠点での対応が可能になった。どこかが被害を受けても別の場所で生産や供給が可能な体制ができつつある。

同社はこのような取り組みを計画書の中に記載している。つまり、これまでリスク回避のために手を打ってきたことがBCPに取り組むことで強化され、形式知として社内の財産となることにつながっている。藤井氏と同じく担当者の田村氏はBCPの策定に当たって「最初は何から始めていいかわかりませんでしたが、会社の取り組みや情報をひとまとめにして整理するよい機会になったと思います」と話す。

今後の課題はなにか。「防災訓練から事業継続へ意識改革すること」と藤井氏と田村氏は共通認識として抱いている。「社員にとって災害から身を守ることはわかりやすいのですが、事業を続けていくための対策を自分事としてとらえるのは難しいんです」。何もなければ仕事が滞りなく進む中、あえてリスクを想定して事業継続へ社員の目を向けていく。200名を超える社員のベクトルの合わせ方が次なる課題だという。

(取材・文/荒木さと子)

 
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