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【其の六】BCPのかなめは“人と情報のバックアップ”

2022.09.13

自然災害や感染症、セキュリティ事故などへのリスクマネジメントの一策として策定する企業が増えているBCP(事業継続計画)。重要なのはわかるけれど、実際どうやって作ったり使ったりするの?とわからないことだらけな方も多いハズ。このコラムではそんなBCPの策定・運用に取り組む大阪の中小企業のエピソードをご紹介します。

【其の六】
BCPのかなめは“人と情報のバックアップ”

アイ・ディー・エー株式会社は約80言語に対応する多言語翻訳を手がける企業。ビジネス文書、カタログやマニュアル等の印刷物、Web、動画など提供するサービスは幅広い。同社がBCPを策定したのは2019年。「地震や大雨、台風などのさまざまな自然災害にどのように対処すればいいのか。指南書が必要だと感じました」と取締役の中村氏は策定のきっかけを話す。

同社の拠点は大阪市内にあるが、顧客は全国に点在し、翻訳を行う外部スタッフたちも全国各地(海外にも)に拠点を持っている。つまり、同社がリスクを想定しておかなければならないエリアは大阪のみにとどまらない。「以前、大きな台風が大阪を直撃しましたが、台風の圏外に拠点があるお客様からは普通に問い合わせがありました。その時に業務を止めない体制づくりが必要だと感じたんです」と話すは、取締役・ジェネラルマネージャーの安藤氏。そのために取り組んだのが“人と情報のバックアップ“だ。

もっとも重要なのが“情報のバックアップ”。同社が扱う情報のほとんどは顧客が世の中に公開する前の機密性の高いもの。漏洩や紛失には細心の注意を払っている。社内に設置するサーバーのバックアップをとりつつ、さらに別の場所にもサーバーを置き、二重にバックアップしている。「取引先の中にはデータをすべて当社に置いているお客様もいます。当社がデータを保有していることが受注のリピート率の高さにもつながっています」と中村氏。情報の保護と管理は事業継続のかなめ。2020年、同社は情報セキュリティマネジメントのISO27001を取得し、さらに体制を強化した。

もうひとつは“人のバックアップ”。自社の被災だけなく、委託先である外部スタッフたちの拠点が被災したらどうするか。「被災に限らず、外部スタッフに病気などの突発的な事態が起こることは想定しています」と安藤氏。万一の際には別の翻訳者に切り替えられるよう日頃から翻訳者の確保に努めるとともに、過去の翻訳をデータベース化して翻訳者が変わっても品質を統一できるように工夫している。

実はこのような事業継続への取り組みがコロナ禍で功を奏した。前出の台風を経験した同社は、社員がどこに居ても業務ができるようにいち早くリモート環境の整備を始めていたからだ。「社員に会社のパソコンを貸与し、自宅から会社のサーバーにアクセスできる体制をつくりました。その際にセキュリティソフトや情報管理の運用ルールも整えていたので、コロナ禍では最初の緊急事態宣言から2週間で在宅勤務の体制に移行できました」と安藤氏。BCPをコロナ禍で運用した良い例である。

今後の課題はなにか。安藤氏は2点を挙げる。ひとつは就業制度の見直し。「リモート環境の整備でこれからは在宅勤務が主流となります。その体制に合った就業規則をつくる必要があります」。もうひとつは社員への意識の浸透。「BCPはつくるだけなく、実際に起こった時に適切な行動ができるように訓練しておかなければなりません。それは社員の安全確保も情報セキュリティも同じこと。全員にその意識が浸透し、運用できる教育の機会が必要だと思っています」。

(取材・文/荒木さと子)

 
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アイ・ディー・エー株式会社

https://www.idanet.co.jp/

代表取締役 トッド ボーディン氏
取締役 中村 明子氏
取締役・ジェネラルマネージャー 安藤 文彦氏
事業内容/多言語翻訳、特許翻訳、多言語ドキュメント制作、多言語WEBサイト制作など