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【其の四】使命は安定的な製品供給 業務に穴を開けない、部品の欠けない体制づくり

2022.05.18

自然災害や感染症、セキュリティ事故などへのリスクマネジメントの一策として策定する企業が増えているBCP(事業継続計画)。重要なのはわかるけれど、実際どうやって作ったり使ったりするの?とわからないことだらけな方も多いハズ。このコラムではそんなBCPの策定・運用に取り組む大阪の中小企業のエピソードをご紹介します。

【其の四】
使命は安定的な製品供給
業務に穴を開けない、部品の欠けない体制づくり

株式会社スイデンは創業75周年を迎える空調機器メーカー。扇風機の部品から換気扇やエアコン・清掃機器等へと製品を拡大していき、特にオレンジ色の工場用扇風機は主力製品としてよく知られている。

そんな同社が2017年にBCPを策定した。きっかけは熊本地震。福岡に事業所のある同社は、直接的な被害はなかったものの取引先が甚大な被害を受け、情報網の遮断から従業員の安否や取引先の情報収集に混乱をきたしたという。そんな経緯から「安定的な製品供給」をBCPの柱のひとつに決めた。

具体的な取り組みのひとつが『業務の誰でも化』。「有事の際、従業員に何かあれば業務が止まってしまいます。その時にどのように補完するのか。各部署でさまざまな事象を想定して、業務の可視化を進めてきました」と専務取締役の松岡氏。どのような仕事がいつ発生するのかを月単位と年単位で洗い出し、マニュアルをつくった。万が一の際にはそれを見れば業務が進む。どのような場合でも平常時の80%以上で稼働できる体制づくりをめざしている。

もうひとつは『サプライヤー調査』。松岡氏は「製品を安定的に供給するためには部品ひとつ欠けても製品にならない」と、仕入先である取引企業に被災時の対応案や代替企業への依頼が可能かどうかの調査を行なった。つまり、「有事の際、もし御社がうちに部品を供給できなければ、他企業を紹介いただくことは可能か」と聞いたのだ。取引先企業にとっては自社の機会を他企業に譲ることにもなるデリケートな調査だが、同社の丁寧な姿勢が伝わり、約85%の取引先から回答を得ることができた。その結果をもとにどれくらいの期間で事業が回復できるのかを算出した。

同社が特徴的なのは、BCPの取り組みを有事の際の事業継続という観点ではもちろん、平常時の生産性向上に結びつけている点である。『業務の誰でも化』は、ひとつの業務に係る時間と労力を見直す人員計画につながっている。『サプライヤー調査』も仕入先の規模や品質、供給体制を調べていくことで部品調達の取り組み方を変えるきっかけとなった。「創業75年で古くから続くものがある中、BCPは新しさを取り入れる良い機会になっています」と取締役の川合氏は話す。

2020年3月、同社はレジリエンス認証を取得した。「BCPで大枠の方針を策定していましたが、工場で機械が稼働しない時にどうするか、部品の供給が途絶えた時はどうするかなど、具体的なケースに十分対応できていませんでした」と総務部部長の橋本氏。2年周期で更新するレジリエンス認証制度はBCPのブラッシュアップに役立っているという。

今後の課題として橋本氏は「BCPを全拠点の全従業員に浸透させていくこと」を挙げる。「現場ではBCPの理解や運用方法に温度差があります。継続的に時間と手をかけていかなければ」。今年度、同社では継続教育のカリキュラムをつくり、全従業員に研修を行う予定である。

(取材・文/荒木さと子)

株式会社スイデン

https://www.suiden.com/

専務取締役管理本部本部長 松岡 秀樹氏
取締役管理本部副本部長 川合 雄大氏
総務部部長 橋本 友彦氏
総務部兼情報システムグループ課長代理 梶本 洋司氏
総務部大阪総務グループ係長 大向 育子氏
事業内容/工場の空調機器など職場環境改善機器を製造