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【其の弐】サービス提供の場所が広域に点在、訪問介護事業ならではのリスクとは?

2022.02.01

自然災害や感染症、セキュリティ事故などへのリスクマネジメントの一策として策定する企業が増えているBCP(事業継続計画)。重要なのはわかるけれど、実際どうやって作ったり使ったりするの?とわからないことだらけな方も多いハズ。このコラムではそんなBCPの策定・運用に取り組む大阪の中小企業のエピソードをご紹介します。

【其の弐】
サービス提供の場所が広域に点在
訪問介護事業ならではのリスクとは?

訪問介護事業を営む株式会社アワハウス。2016年にBCP策定に取り掛かった。想定したのは大地震。「訪問介護は利用者の自宅で行われるので、最初に取り組むのはスタッフたちの安否確認です」と取締役部長の加納氏。

大阪府内のあちこちで仕事をするスタッフの状況をどのようにつかむのか。自社製の介護業務支援ソフト『リバーラン』にBCPの視点を組み込んだ。地震発生時に、発信権限を持つ担当者が安否確認のメールを発信。スタッフ全員に情報が届き、どこにいてどのような状況なのか返信が入る仕組みである。このシステムを軸にWeb、メール、伝言ダイヤルの3手段で安否確認を行う体制を整えた。

もうひとつは業務影響度分析表の作成。災害発生後、どの業務をいつまでにやるのか、優先順位と日にちの目安をつくった。そこには利用者の介護状態や、独居か同居かなどの情報が記され、独居で状態の重い人から介護にあたるようにルール化されている。

そして社員やスタッフが同じ内容を共有できるようにとBCPの目的や発動基準、担当者の役割やフローチャートを明確にした携帯用のハンドブックもつくった。「BCPを策定することで、誰が何をするのか曖昧だった役割が明確になりました」と加納氏。しかし、そんな取り組みにも同社ならではの課題が見つかった。それはスタッフの大半がアルバイトという点だ。

BCPに関する情報をまとめた携帯用ハンドブック

「アルバイトは会社が雇用を保障しているわけではないので、災害時に自分の生活をさしおいて仕事に戻ってきてくれるだろうか、そんな不安が浮かび上がりました」と元BCP担当の横田氏。訪問介護事業は現場で働くマンパワーで成り立つ事業。それがアルバイト中心で回っているのは災害時の事業継続にとって大きな課題だと気がついた。「災害時に仕事に復帰してもらえるのか。そのための予算を組んでおく必要性を感じています」。

もうひとつの課題は利用者の避難。居住地も介護度も異なる利用者を状況に合わせてどのように避難させるのか。薬の場所や情報を1か所に集約させておくなどの工夫はあるが、現実に起こった時の動き方については検証を続けている。

2021年度の介護報酬改定で、全ての介護事業者に2024年度からBCPの策定が義務付けられることになった。「社内に設けた対策委員会を再開し、策定したプランをもう一度見直してブラッシュアップしていきます」と加納氏。業界でいち早くBCPに取り組んだ事業者として、その経験と知識を業界に還元するためのセミナーも企画している。

(取材・文/荒木さと子)

 
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株式会社アワハウス

https://ourhouse.co.jp/

第二介護事業部 取締役部長 加納 淳子氏
第一介護事業部 部長 瓦井 寛二氏
元BCP担当 横田 康成氏
事業内容/訪問介護、リラクゼーション事業等