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【其の八】デザインデータが命の金型製作会社、その対策と課題とは?

2023.01.09

自然災害や感染症、セキュリティ事故などへのリスクマネジメントの一策として策定する企業が増えているBCP(事業継続計画)。重要なのはわかるけれど、実際どうやって作ったり使ったりするの?とわからないことだらけな方も多いハズ。このコラムではそんなBCPの策定・運用に取り組む大阪の中小企業のエピソードをご紹介します。

【其の八】
デザインデータが命の金型製作会社、その対策と課題とは?

株式会社三木製作所は天然素材などの複雑なデザインを3Dデータに再現して3次元微細加工による金型を製作する会社。BCPに取り組んだきっかけは取引先からの要請だった。「この5年、BCPの策定を求められる風潮が強くなり、うちもやらないわけにはいかなくなって」と取締役の三木氏。2018年に相次いだ台風や地震も背中を押した。

同社が位置するエリアは海抜マイナス80cm。ハザードマップによれば、南海トラフ巨大地震が起きた場合は2~3mは水没すると言われている地域で、大雨が降れば浸水するリスクが高い。「機械が水に浸かればうちの事業は終わり」と、浸水除けの止水板を対策の一つとし、雨が降りそうな日と台風の時期に備え、本社と工場の入口に設置することにした。

止水版設置の様子

もうひとつは情報セキュリティの強化。同社の事業はデザインのデジタルデータが命である。ネットのセキュリティ強化はもちろん、データを外付けのハードディスクに保存し、本社以外にもバックアップデータを置いている。今後はクラウドに保存することも検討中だ。

BCP策定後は計画書に基づいて演習も行った。地震を想定して会社の見取図に合わせ、社内の点検が必要な箇所をチェックしたり、社員全員で内容を共有した。これらのことが従業員の意識変化に役立った。「地震が起きたらどうするか、以前は全員の考え方がばらばらでしたが、策定後は会社として統一した行動をとるという認識ができました」と三木氏。会社の一員であることをふまえ、緊急時にとる行動が社内外にどのような影響を与えるのかを考えるきっかけになったという。

机上訓練の様子

一方で今後の課題も浮かび上がった。ひとつは「計画書として書類にまとめたものの、実際に起こる災害を想定しきれているのかどうか」という点だ。いざという時にどこまでできるのか、常に不安がつきまとう。もうひとつは機械の代替えについて。機械が損傷した際に同じ機械を使用している会社や公共機関からの貸与を検討しているが、簡単に機械を代替えできない金型製作業界に共通した課題といえる。

さらに対策にかける金銭面への懸念もある。「いつ起こるかわからない災害に対してどこまでお金をかけて準備するのか。うちのような小規模企業にとってはコスト面も課題です」。BCPは策定して終わりではなくさまざまな局面を想定して準備する。継続して考え続けることが求められている。

(取材・文/荒木さと子)

 
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株式会社三木製作所

代表取締役社長

三木 元親氏

https://www.mikiss.co.jp/

事業内容/精密金型・エンボスロールの製作