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【其の十一】ひとつやられても全部はやられない、リスク分散を重視した出店戦略と業態戦略

2023.07.24

自然災害や感染症、セキュリティ事故などへのリスクマネジメントの一策として策定する企業が増えているBCP(事業継続計画)。重要なのはわかるけれど、実際どうやって作ったり使ったりするの?とわからないことだらけな方も多いハズ。このコラムではそんなBCPの策定・運用に取り組む大阪の中小企業のエピソードをご紹介します。

【其の十一】
ひとつやられても全部はやられない
リスク分散を重視した出店戦略と業態戦略

「根底にあるのは阪神淡路大震災の記憶です」。当時、神戸で震度7を経験した立花エンターテインメント・ワン株式会社の専務取締役 大垣氏は、事業継続を考える際にその時の感覚を思い出す。「大阪に比べると、特に神戸の被害はひどく、ダメージに大きな差がありました」。地震を前提に考えた同社の事業継続の方針はリスク分散を重視する。

たとえば店舗のロケーション。多数の飲食店を経営する同社は梅田、難波、天王寺、三ノ宮とエリアを集中させない出店戦略をとる。「どの震災を見てもそうですが、場所が変わると被害の状況も変わる。同じ関西でもひとつのエリアがやられても全てのエリアはやられないという感覚があるんです」。業態もしかり。和食、居酒屋、中華、お好み焼き、和洋菓子などと幅広い。「創業から60年、事業の浮き沈みの中で業態を一本化する危険性を避けてきました」。

食材の調達もそうだ。肉、魚、酒、米などのカテゴリーごとに2つ以上の仕入ルートを持つ。見積もりの段階から複数の業者とやり取りするが、品質・コスト面だけでなく、いざという時に調達が途絶えないように相手先の実績や供給ルートの分散も念頭に置いている。

このような方策は同社の歴史の中で少しずつ培われていったものだが、コロナ禍でその成果を見ることになった。緊急事態宣言下、飲食店は人流抑制の影響を真っ先に受けることになり、同社も多くの店舗で休業に踏み切った。その一方、従業員には仕事を確保しなければならない。「飲食業では、一般的に人は専門外の職種に就くことに抵抗があるものですが、うちは業態を超えて違う職種にチャレンジしたい人が多かったんです」。

それはなぜか。日頃から従業員の職種や配置もひとつに絞らず、いろいろな職種に対応できる多能工化の制度体制があるからだという。「うちの店ではこのポジションしかできませんという人は少ないですよ」と木村氏。和食の職人が中華料理の鍋をふることもあれば、調理師がホールで接客することもある。柔軟なジョブローテーションは従業員の能力向上と店舗間の助け合いにつながっている。

当面の課題はコロナ禍からの回復だという。「コロナ禍前と同じくらいに売上げが回復している店もありますが、どうなっていくかわからない店もある。先をなかなか読み切れません」と大垣氏。とはいえ、コロナ禍でもメニュー改変やオンライン予約の強化やEC通販事業など、できることはやってきた。それが成果として見え始めた。事業継続は日々の地道な取り組みの積み重ねだと実感している。

(取材・文/荒木さと子)

 
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立花エンターテインメント・ワン株式会社

専務取締役 大垣 有作氏
常務執行役員 木村 知司氏

https://www.tcbn.co.jp/

事業内容/飲食店の経営、宅配デリバリー・EC通販事業、食料品製造・販売事業