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【其の五】日常から非常時の状態を創り出す

2022.07.01

自然災害や感染症、セキュリティ事故などへのリスクマネジメントの一策として策定する企業が増えているBCP(事業継続計画)。重要なのはわかるけれど、実際どうやって作ったり使ったりするの?とわからないことだらけな方も多いハズ。このコラムではそんなBCPの策定・運用に取り組む大阪の中小企業のエピソードをご紹介します。

【其の五】
日常から非常時の状態を創り出す

タイホ防災株式会社は消防用設備を取り扱う企業。主に火災への備えをサポートしているが、最近は“総合防災”という観点で、企業の事業継続につながる提案にも力を入れている。

「関西では、消防設備に特化した防災事業を行う会社が多いですが、防災という言葉からは地震や水害などの災害を思い浮かべる人が多いです。これからは消防設備だけでなく、世間一般の防災のイメージに近づけていこうと思っています」と、代表取締役の山下氏。

同社がBCPを知ったのは3年前。「新社屋の建築計画で融資を受けるための条件のひとつがBCP作成でした」ときっかけを明かす。山下氏が取り組んだのは、無停電システム『オフグリッド』。電力会社の電力系統だけに頼るのではなく、太陽光などからつくった電気を蓄電して使う仕組みである。同社はこのオフグリッドを導入し、新社屋全体の電力を「太陽光発電」、「電力会社」、「プロパンガスによる自家発電」の3種でまかなっている。

屋上に設置されている太陽光発電装置。

「この仕組みがすごいのは、日頃から非常時の電力を創り出しているところ」と山下氏が言うように、同社の電気システムは24時間365日、自家発電で稼働している。災害が起きて停電すると、そこから蓄電池を取り出してきて自家発電装置を動かすのが一般的だが、同社ではライフラインが絶たれる有事の際でも“無瞬停”。つまり停電の状態が一瞬もない。照明もエアコンもパソコンも、まるで何事もなかったかのように動き続ける。

電力消費量はグラフ化されリアルタイムで確認することができる。

「サーバが動いているのでお客様のデータが守られます。従業員とその家族とも連絡が取れます」。同社の理念は従業員とその家族を守ること。それがお客様を守ることにもつながるからだ。会社を動かし続けるこの仕組みは、山下氏の「会社を絶対死なせない」という意思の表れでもある。

社屋には太陽光発電パネル、自家発電装置、プロパンガス、電力会社からの供給装置、オフグリッド用蓄電池など、無停電に対応する設備が整然と置かれている。「BCPでは事業継続のためのさまざまなアプローチがありますが、うちは電気の備蓄と稼働を最優先に考えました」と山下氏。

新社屋は近隣の避難所としても申請されている。

電力の消費量は年々高まり、この先、電力会社の電気系統だけに頼るのは厳しい時代がやってくる。街のどこかで停電する状況も起こり得る。そんな中、どのように事業を継続していくのか。“非常時に備える”から、その一歩先を行く“非常時の中にいる”同社の事例は実践的である。

(取材・文/荒木さと子)

 
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タイホ防災株式会社

代表取締役

山下 泰助氏 

https://www.taihobousai.com/

事業内容/消防用設備全般の設計、施工、点検、管理コンサルタント業務