食品ロスを削減!おからを活用したエナジーバー
1999年の創業以来、吹田市で親しまれているパン屋の「ラパン」。パン屋は食品ロスが多く「昔からサンドイッチのヘタを捨てるのがもったいない!とずっと思っていた」という久保恵理氏。このままではあかんと2016年にパンのヘタをアップサイクルしたパン粉を使った串カツ店をオープンする。
同時期に取引先の百貨店のニューヨークフェアの担当となり、年に数回渡米。現地のベーカリーやパティスリーとの交流を通じ、日本より進んでいる環境問題への意識や健康志向に影響を受ける。廃棄される食材を使った商品開発ができないかと考えると、おからが思いついた。低糖質で食物繊維と植物性タンパク質が豊富な和製スーパーフードであるにもかかわらず、豆腐の副産物として年間約5万トンも廃棄されていることを知るとおからを使った商品開発に突き動かされた。
当時すでにおからを使った商品はたくさん販売されていたものの、小麦粉や米粉を添加した商品がほとんどであった。開発を手がける久保晃一氏は、数あるおからの長所の一つである低糖質、それをそのまま商品化したいと考え、小麦粉や米粉を一切使用しない製品作りに勤しんだ。パイやスコーンなどいろいろ試作したが、おから独特ののどに詰まるような食感に苦労した。マフィンは口溶けよくおいしくできたものの賞味期限が4~5日と短く、販路拡大につながらなかった。
「添加物を使えば簡単だが無添加にこだわったことで、焼き加減で賞味期限を延ばせるビスケットやエナジーバーができた」と晃一氏。よりクオリティを追求するため、当時5店舗展開していたパン屋を徐々に1店舗に縮小。創業から人気のあった食パンの専門店にして商品開発に力を注ぎ、4年の月日を掛けて「OKARADA®」ブランドを立ち上げ、「OKARADA®ファイバーバー」や「OKARADA®ファイバービスケット」の開発に成功した。ナッツや大豆パフなどをブレンドして食感や風味を楽しめるだけでなく、高タンパク質で食物繊維が豊富に含まれるため、低糖質なのに1本でも満足感が味わえる。
販路拡大や資金調達のため2019年にSDGsマッチングイベントに参加したことをきっかけに、エナジーバーの市場が大きいニューヨークのピッチイベントに挑戦。セミナーや英語でのプレゼンの練習など半年間無我夢中で取り組み、2021年2月に日本代表としてファイナル進出を果たした。また、2022年2月から1か月間、シリコンバレー発RaaS事業モデルの先駆けである体験型ストアb8taの新宿店に出店を予定、その他国内外の販路開拓の戦略を投資家やJETROなど支援者とチームで練っている。「たくさんの方に助けられているので、日本のエナジーバーといえば『OKARADA®』と言われるくらいになりたいですね」と恵理氏。
11月にはビール粕を使用したビーガン向けのビスケットやエナジーバーを発売開始。これからも食品ロス削減への想いからつながった人との縁を大切に、食品製造時の副産物を活用したヘルシーフーズを開発し、国内外に広めていく。
(取材・文/三枝ゆり)