緑の力で都心に人のつながりを生み出す
主力事業は緑化事業だが、そのさまざまな取り組みを聞いていると、それらはすべて、都会の中に緑という自然を取り入れることで人と人のつながりを新たに生み出す仕事、と言い換えることができる。例えば、2003年8月にできた商業施設「なんばパークス」の屋上ガーデンも同社が手掛けた緑化庭園の一つ。約300種、約7万株の植栽で埋められ、都市と自然を同時に体験できる空間だ。「京都や神戸からも人を呼べる場所にしたい」という施主からの依頼を受けて作り上げた都市の森は土木学会賞も受賞。市民参加型の運営で、その活動からさまざまなコミュニティが生まれる場づくりもめざしている。
黒曜石を細かく砕き焼成してできる、軽量かつ断熱性、吸音性に優れる資材、パーライトの可能性に着目した父・泰治氏が1965年に創業。その用途を天井、壁、屋上材などに広げていったが、2代目の橘氏は事業の本質を「人が幸せになるための居住空間をつくること」と捉え直し、事業に磨きをかけていった。パーライトを土に混ぜ、保水性、通気性にすぐれた地盤材もその一つ。これがきっかけとなって屋上緑化事業に進出した。「緑化に関してはまったくの素人集団だったが、社会の役に立ちたいという思いがあったからこそ新技術の導入、開発を続けることができた」と振り返る。例えば御堂筋のイチョウ並木は、コンクリート上に根が浮き上がらないよう、細かい廃コンクリートと土壌材を混ぜることで、根の生え道を確保するとともに、保水性を高めることで樹木の成長も促している。
「緑はあくまでも呼び水。その力を生かし、いかに滞在、交流させられるかが街のにぎわいにつながる」と、近年はハード、ソフトが一体となった提案に力を入れる。例えば、中津にある築55年のビルをリニューアルした「ハイパー縁側」もその一つ。新旧の建物が混在する空間にクラフトビールのブルワリーなども設け、毎週ゲストを呼んで講演を開催するなど、その場の特性を生かしたコミュニティづくりに工夫を凝らしている。
同社では、新入社員に対しても上司が仕事の指示を出すことはしない、「自発的に自ら仕事を作る」実験的な仕事のやり方を導入している。「部活のように楽しくやりがいを持って働ける場でないと、社員も働き続けたいと思わないでしょう?」。社会を、街を、そして会社をサステナブルにするためのあくなきチャレンジが続く。
(取材・文/山口裕史)