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包材から食材へ、使い捨てせず食べられるカップ

2021.12.06

アルミ箔、フィルム、紙などを用いて食品の包装資材を作る木村アルミ箔。創業90年を超える老舗企業で、2021年に就任した現社長は4代目にあたる。創業者の曾祖父の口癖でもあった「よそとちゃうことせなあかん」を経営理念に、長年他社との差別化をめざしてきた。

20年ほど前、コンビニエンスストアに電子レンジが導入され温められるようになったのは、アルミ製仕切り容器の代わりにフィルム素材のおかずカップの開発に成功したのがきっかけだ。当時、小規模な会社としては異例とも言える「ISO9001」の認証を取得し、大手コンビニからの信頼と市場シェアを得てきた。

しかし、どのように作っても最後は捨てられるのが、包装資材の運命だ。木村氏は言う。「一般的には使い捨て容器とも呼ばれるように、ゴミになる運命の容器を作っているようなものなんです。でも、包んだり載せたり運んだり、食品が流通する過程ではどうしても必要なものでもある。それならば、環境問題をきちんと見据えた企業活動をしていく責任があると考えています」。

毎年決める会社のスローガン。

環境負荷を考える中、先代社長の「食べてしまったらゴミにならへんのになぁ」というひとことから生まれたのが、海苔のうつわだった。フィルムカップと同様に、熱を加えて金型でプレスする「熱成形」の技術が使える。温度や時間、形など、試行錯誤してサンプル化までしたものの、世に送り出す上では大きな壁があった。それは「食品」であること。食べられるからこそ画期的だったが、食べられるからこそ、衛生・安全面の要求レベルが高く、包装資材メーカーには製品化までは対応できなかったのだ。

そこで、大きな回り道をする。洋菓子店舗の営業を始めたのだ。ケーキの受け皿やカップはたくさん扱っていたが、実際に使う側の立場を経験し、製品に役立てたいという思いもあった。食品を自ら扱うノウハウを得て、「HACCP」「ISO22000」、そして「FSSC22000」と食品安全管理の国際規格を取得。食べられるカップ作りの製造環境を整えた。

いまや素材は、焼き海苔から味付海苔、おぼろ昆布、かつお節、大豆、大根などの野菜へと拡大。環境問題だけではなく、「楽しい食卓の演出」というエンターテインメント要素を加え、飲食店や土産物店から家庭でも消費される商品に育った。先代から受け継いだ夢もある。廃棄される野菜や水産物を使い、シートから自社で作った食べられるカップ。使い捨てどころか、捨てられるものに命を吹き込む。それが、これから実現したい「よそとちゃうこと」だ。

代表取締役社長 木村彰宏氏

(取材・文/衛藤真奈実)

木村アルミ箔株式会社

代表取締役社長

木村 彰宏氏

http://www.kimura-alumi.co.jp

事業内容/アルミ箔・フィルム・紙・可食素材による食品容器の製造・販売