商品開発/新事業

CRAFT BEER BASEの挑戦!世界に日本のクラフトビール文化を発信

2024.03.05

好きなビールに関わる仕事に就こうと、ビアカフェで働いていたときに、研修で訪れたベルギーでビールの奥深さや醸造家の熱意にとりつかれた。「多種多様なビールの向こう側にある歴史、作り手の思いをしっかり伝えられるクラフトビールのプロになろう」と心に決め、帰国してからは店にある300種類のビールを毎日3本ずつ飲んでテイスティングノートを付けた。

同じビールを周回するたびに味が一定ではないのはなぜなのか。取得したビアジャッジの資格をもとにした知見だけでは飽き足らず、英語の文献を読み漁って科学的な裏付けを取り、海外のクラフトビールの権威に直接メールで尋ねた。

造りの個性、流通、保存のあるべき姿が見えてくると、自分が納得できるクラフトビールを、納得できる状態で売りたいと思うようになり、2012年、クラフトビール専門店(酒屋兼ビアパブ)「CRAFT BEER BASE(CBB)」をオープン。

店では「背後にあるストーリーが明確である」ビールだけを扱い、醸造所から店まで冷蔵した状態で流通させるなど品質管理を徹底した。「店主が若い女性」というバイアスもかかったためか、突出したこだわりが理解されるまでに時間を要したが、クラフトビールの飲み手、作り手の仲間が徐々に増え、信奉者が増えていった。

さらに2021年9月には、醸造所も備えた「CRAFT BEER BASE – MOTHER TREE」をオープンし、10年越しのビジョンを形にした。場所として選んだのは、CBBのあったところからすぐの大淀エリア。「世界各地で地域固有の歴史を背景にしながら独自のクラフトビールが育まれてきました。コロナ禍でこの街の人に助けてもらったこともあり、大淀で地域とともにあるビールをめざしたいと考えました」と話す。

代表取締役 谷 和氏

谷氏には日本独自のビールを世界に広めたいという思いがある。現在、チャレンジしているのは、麦芽の一部を黄麹に置き換えて作ったビールだ。「黄麹は日本酒だけでなく醬油、味噌づくりにも使われ、日本の食文化のアイデンティティでもあります。なにより日本食との相性もいいんです」とその可能性にかける。「ビールという世界共通の酒を使って、海外のクラフトビール市場にアプローチすれば日本の麹文化がより受け入れられやすくなります。その先に日本食も含めた日本酒の魅力も伝えていくことができれば」。

20年近くビールに関わり続け、日本のクラフトビール文化をけん引してきた谷氏だが「まだまだスタート地点に立ったばかり。世界に日本の文化を発信し、若い人たちがクラフトビールを楽しめる未来を作っていきたい」。谷氏自身がその無限の可能性に一番ワクワクしている。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

株式会社CRAFT BEER BASE

代表取締役

谷 和氏

https://craftbeerbase.com

事業内容/クラフトビールの醸造、販売