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リケジョならではの探究心で夫の困りごとを解決

2022.10.04

「股が痛い」。京都大学大学院で薬の効果を予測するデータ解析の研究に従事していた宇野氏が、股ずれリスクを減らすパンツで起業することになったのは、ぽっちゃり夫の一言がきっかけだった。夫の兄も同じ悩みを抱えていると知り「パンツ御殿が建つかも」と色めいた。「健康をテーマに社会課題の解決をめざす研究を続けてきたからこそ、身近な人の体の悩みを解決したいと思えた」と当時の決断を振り返る。

学生結婚後、しばらくは主婦に専念していたが、大学時代に取り組んだ研究を完遂したい思いが湧いて京大研究職に採用された後、院を受験して合格。その後、布製の生理ナプキンにヒントを得たパンツの試作は大学での研究、帰宅後の家事を終えた夜の時間を充てた。市販のパンツと効果を比較検証するため夫に股ずれができるまでテニスを続けてもらいエビデンスも取った。

「電話も交渉事も苦手」と言う宇野氏が、市役所に駆け込んで縫製工場を紹介してもらい、商品広報のために商工会議所に相談できたのは「一人でも多く股ずれに悩む人にパンツをはいてもらいたい」という強い思いがあったから。昨年9月からは大学を休学し、リケジョならではの探究心を股ずれNOパンツの普及に注ぎ込んでいる。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

◎創業:2021年6月
◎準備期間:2年
◎開業資金:200万円
◎特許取得費用:100万円
5つの特許事務所に打診し、それぞれに支払った先行調査費用がかさんだ。
◎生地の仕入と工賃:30万円
縫製工場は4カ所当たった。それぞれに得手不得手があり、最終的には市役所に紹介してもらった先に落ち着いた。
◎HP作成費・パッケージ製作費:50万円
EC機能も付いたHPを作成。

― 起業年表(起業ストーリー)―
◎2013年3月
大学在学中に結婚、出産。大学卒業後は子育てに専念。
◎2017年4月
神戸大学の研究補助スタッフを経て京都大学の研究職に移る。この頃から股ずれリスク低減パンツの試作を始める。
◎2020年4月
京都大学大学院医学研究科人間健康科学系に入学。
◎2021年4月
立志庵の利用開始。6月に会社を設立し、8月から商品の販売を開始。同年10月には、大学院を休学し、事業に専念することに。

― 学びながら起業準備してみて ―
◎良かった点
大学の研究で社会的意義を考える癖がついていたからこそ、夫の「股が痛い」という言葉に、社会的意義を見出すことができ、自分で解決しようと思えた。
◎苦労した点
コロナ禍で子どもが通う小学校が休校になり、仕事、家事、子育ての配分に苦労した。夫には在宅勤務を増やしてもらった。
◎気を付けるべき点
勤めた経験がなく、電話の応対、メールの書き方、契約の方法も知らなかった。それらのことに長けた人に積極的にアドバイスを求めることが大事。

代表取締役 宇野 史恵氏

― <起業・独立>ココがポイント ―
宇野さんは、産創館の起業プログラム「立志庵」を利用され起業に取り組まれました。経営相談室のスタッフコンサルタントから収支計画、ブランド戦略、販売促進などさまざまなアドバイスを受け実践していかれました。ご本人にとっては未経験のことも多かったようですが、事業化を成し遂げたいという強い想いが、積極的な行動へとつながったと思います。
(大阪産業創造館 創業支援チーム 明田 豊広)

【 立志庵 】https://www.sansokan.jp/akinai/risshian

株式会社オーギュストケクレ

代表取締役

宇野 史恵氏

https://august-kekule.com

事業内容/股ずれ防止パンツの製造・販売