Amazonの美容ジャンルでNo.1をめざす
オーガニックコスメ「ALLNA ORGANIC」、ハイエンドのメンズコスメ「HMENZ」、美白スキンケア「WHITH WHITE」をはじめ美容系ブランドを展開するイルミルド。販売はAmazon、楽天のECモールに特化し、カスタマーレビューを丹念に読み込んだマーケティング戦略でヒット商品を数多く送り出している。
―― お笑い芸人をめざしていたそうですね
高校卒業後、幼なじみの友人とともにNSC(吉本総合芸能学院)に入学しました。いろんなオーディションを受けたんですけど、お笑いの才能がないことに気づいて4年でやめました(笑)。アルバイトをしていた運送会社にそのまま就職し、順調に昇進していたこともあり、このまま勤め続けてもいいかなと思っていました。そんな時、冒頭に話した幼なじみが立ちあげていた会社でEC物販を始めることになり、ついては事業責任者をやってほしいと誘われ、面白そうだなと思って引き受けました。
お笑いの世界で鍛えられたことは、自分のアイデアで人に笑ってもらうことの喜びを覚えたことでしょうか。今でもどんな商品を出せばお客様に喜んでもらえるかをまず考えるようにしています。
――― その後、自社ブランド品を手がけるようになったきっかけは
親会社はもともとイベント会社だったので、SNSから消費者をWebに誘導し、売上げにまでつなげることを得意としており、2016年には年商15億円まで成長していました。ただ、悩みは利益率が低いことでした。仕入れた商品が届くまでに代理店、卸を介するのでただでさえ利益率が低い中でライバルとの価格競争を強いられると、たちまち利益が薄くなってしまいます。
また、仕入れた商品を実際に目にすることなくただ右から左へ流すだけだったので、携わっているスタッフもモチベーションを保てないでいました。そこで、自分たちのブランドを作りたいと考えるようになったんです。
―― 自社ブランド品の開発販売で苦労はありましたか
利益率の高い化粧品市場を狙って、まずクレンジングジェルやシャンプーを商品化することにしました。販売は自社サイトから直販しようと考えていたのですが、ここで苦労しました。広告による露出がものをいう世界なので、大手メーカーの資本力には到底かないません。そのすき間をねらいにいこうとすると、消費者心理をあおるような法律すれすれのコピーを使うしかありません。それはしたくありませんでした。また、広告費を使うのでその分商品価格を高くせざるを得なくなりますが、そこから目をそらすために初回は安く売って、2回目以降価格を上げる定期便というやり方も多くみられました。そのようなやり方にも違和感を覚えました。
その点、Amazonや楽天市場などのECモールは、モールの中でしっかりと販促活動をしていけば目にとめてもらいやすく、商品力をそのまま訴求することができます。自分たちにはECモールを使って販売するやり方が合っていると感じ、そこに資源を投入することにしました。
―― ECモールで具体的にどのようにヒット商品を生み出していったのですか
当初はいわゆるマーケティングの教科書通りに、市場の規模、ターゲティングなどを決めて商品開発を進めていったのですが、途中からECモールならではの特性を生かし、カスタマーレビューを徹底的に読み込んで、消費者の要望やニーズをくみ取りながら商品開発を進めるやり方に切り替えていきました。
たとえば「ALLNA ORGANIC」のシャンプーを開発する前は、無添加、ノンシリコン、アミノ酸入り、サロン品質、などのキーワードが多く見られました。そこでOEMで製造してくれる先をネットで調べ、打ち合わせを重ね、そのキーワードで生産してもらえるところと商品開発を進めていきました。
中でも重視した点はサロン品質にこだわったところです。美容サロンで使われているシャンプーは業界の商習慣により一般小売りをしてはいけないというのが暗黙のルールになっています。サロン品質のシャンプーを直販すれば価格も抑えられるため品質、価格の両面で消費者に喜んでもらえると考えました。
―― 男性用コスメにも進出しました
カスタマーレビューの中で男性用コスメが求められていること、そして中でもどのようなキーワードで検索されているかを分析し、開発したのがメンズ用脱毛クリームです。一般に男性用の脱毛は、医療行為で行うと永久脱毛が可能ですがかなり高額で、何度も通わなければなりません。一方、脱毛クリームであれば効果の期間は限られますが、数千円で購入することができます。ユーザー側からすれば肌の露出が増える夏場だけでも脱毛できればいいと考えている人が多かったので、クリームがハマりました。数十万アイテムあるビューティカテゴリー全体のランキングで1位を獲得することができました。
発売した後も常にカスタマーレビューをチェックしながら、改善しています。当初販売していた脱毛クリームは、垂れやすくすぐに落ちてしまうというコメントが多かったので、粘度を高めて垂れないようにした改良品を送り出し、満足度を高めています。
―― 今後、注力していくところは
Amazonはもはや一般消費者が商品を購入する身近なプラットフォームの地位を確立しており、ECモール市場は今後ますます伸びていくことでしょう。当社としてもこれまで通りAmazon、楽天というECモール市場に特化し、ECモールにおけるNo.1美容ブランドの地位を確立したいと考えています。それを起点に近い将来ドラッグストアなどのオフラインのチャネルも開拓するとともに、確立したブランド力を生かし海外市場、とくにアメリカ、中国、東南アジアにも進出し、Amazonが生んだ日本代表の美容ブランドとして世界に発信していきたいと考えています。
―― 起業を考えている人たちにメッセージを
全くの門外漢からネット小売業の世界に入り込んだわけですが、とにかくお客様にどうしたら喜んでもらえるかを夢中で考え続けてきた結果、ここまで成長することができました。イルミルドという社名には、明るく照らすという意味を込めています。商品を通じて社会を、世界を明るく照らすことができれば、おのずと従業員も、そして自分自身も輝けると思っています。みなさんも自分が輝ける世界で夢中になってみてください。
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)