初めての海外旅行で訪れたメキシコでカリブ海の朝焼けに感動し、大学生になると世界を放浪するバックパッカーに。
指名ナンバーワンの添乗員時代は年間200日を海外で過ごし、旅が日常になったという山田氏。経験を活かそうと起ち上げたグローバルブラストでは、観光業界としても新しい分野であるインバウンドに挑戦することを決めた。
「私の育った大阪は観光業界では常に京都の陰に隠れてきました。大阪・関西万博や統合型リゾート(IR)構想が期待されても、カジノだけでは寂しい。大阪がもともと持つ魅力を世界に伝えられたら」と目を輝かせる。
英語で対応できる香港・台湾や欧米からの訪日客をメインターゲットに、大阪城での早朝ジョギング、天神橋筋商店街や九条といった下町巡りなど、ディープな大阪の日常が体験できるツアーを多数企画。
「旅行者にだけ特別料金を設けたり、食事代にマージンは乗せたくない」と意志を持って低価格を貫く。
ハイキング、街歩き、釣りなど、地域の魅力をコンテンツ化。
それでも集客は難しいと山田氏はいう。特にアジアからの旅行者は予定を組んでからの来日が多数を占め、ツアーは計画段階で検討してもらう必要がある。
現地でのチラシ配りやSNS広告を試みたものの、国ごとに戦略も異なるプロモーション活動は、費用も手間もかかり過ぎることを悟った。
「リピートや口コミにつなげるためには、来てもらった人に100%満足してもらうこと。それが一番の近道だと考えるようになりました」。
場所を借り、1回1200円でたこ焼きの体験教室を始めたのも、最初の一歩の敷居を下げるため。記念写真を撮り、宿泊先近くのお勧めスポットを教え、時間の中で目一杯楽しんでもらう。
食事に困るイスラム教徒を見て、ハラールたこ焼きも始めた。さらに、日本語の会話教室やうどん教室、クルーズ船とのコラボ、BBQ場のレンタルや民泊まで、ツアーとシームレスにつながりそうなものには、果敢にチャレンジしている。
たこ焼きを入り口に、ツアーにも興味を持ってもらえたらと話す。
根底にあるのは、世界50カ国以上を旅して確信した日本への、故郷・大阪への想いだ。
ゴミが少なく清潔な街、夜間も安心して歩ける治安の良さ、四季折々の自然の美しさ。少しずつ数を減らしてはいるが今も残る商店街や銭湯。冬は鍋を囲み、夏はビアガーデンで乾杯する人々。安くて美味いが当然の食文化。川沿いにビルが並ぶ独特の風景。
表層的なツアーではなく、本当の魅力を。「良いコンテンツがあれば、人は集まる」。大阪生まれ、大阪育ちだからこそ、強い想いでインバウンドと向き合う。
代表取締役 山田裕大氏
(取材・文/衛藤真奈実)
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