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【飲食店開業への道】燻製プラスαで変化を加え続ける「燻製バル トリンプ」の10年を支える“こだわり”とは

2024.01.22

JR福島駅近くに燻製料理を出すバル「トリンプ-TRIUMPH-」をオープンして今年で10年の節目を迎えた。新陳代謝の激しい飲食業界で、コロナ禍をくぐり抜けながらも店を続けてこられた理由を尋ねると「ここに来るのを楽しみにしているお客さんのおかげ」と代表の山中氏は柔和な笑顔で語る。

代表 山中 啓史氏

大学卒業後は東京の半導体試験装置メーカーに就職し、故郷の関西を離れた。お酒を飲むこと、食べること、料理を作ることが好きだった山中氏はかねてより「いつかはBARを開くこと」を目標に掲げていた。そしてリーマン・ショックが襲った40歳の時に行動に移す。「もともとは定年後にと考えていたのですが、会社の早期退職制度を開業に活用し、体力のある若いうちに動こうと考えました」。

会社員時代から着々と準備は進めていた。数多ある飲食店でキラーコンテンツになるものはないかと考え、好きなキャンプで元々自分でもつくっていた燻製料理に着目。東京の燻製料理店に通い、教えを請うた。退職後は大阪に戻り、知り合いの店で仕込みの手伝いをした後、イタリアンレストランでホール、厨房を担当。そして満を持して、2013年6月、福島に念願の燻製バルのオープンにこぎつけた。

燻製でひきつけながらも主食となる料理が必要と考え、パスタやリゾットなどをワインとともに提供した。スタートは採算が順調だったが、その勢いがいつまでも続くわけではない。だからこそ山中氏はオープン時から決めていたことがある。「3年経って採算が取れない場合はサラリーマンに戻る判断をしよう」。3年目を迎える直前、採算面から撤退を迷っていた時に、3周年記念の催しを楽しみにしている複数の顧客の姿を見て気づいた。「もう自分だけの店ではない。お客さんたちの店でもあるんや」と、店を続ける覚悟ができた。

3周年を機に燻製メニューの充実を図り、「燻製ハンバーグ」を開発。また、季節ごとに楽しんでもらえるよう、ホタルイカ(春~初夏)、トマト(夏)、サンマ(秋)、カキ(冬)など旬の食材を加えた。工夫は食材だけではない。アルコールは、ワインだけでなくクラフトビールやクラフトジンのラインアップもそろえていった。また、2019年のラグビーワールドカップを機に大型モニター画面にスポーツ中継を流すようにしたところ、イベントごとにスポーツ好きが集まってくるようになった。

燻製手法についても怠りない。作り置きができるよう真空パック装置を導入したところ、圧力がかかることで表面の煙成分が内部に入り、よりスモーク感が出ることが分かった。「サラリーマン時代とは違い全ては自分次第。ストレスが減りました(笑)」。10年を経た今も、燻製プラスαで常に変化を加え、新しい顧客を呼び込んでいる。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

【 開業資金 】 750万円
改装費などの開業資金450万円は、40歳まで務めた会社の退職金で充当。これとは別に運転資金用として日本政策金融公庫から300万円の融資を受けた。

【 立地選定 】
大阪で乗降客数の多い駅の中で当時身の丈に合った家賃のエリアを選んだ。当初は天満周辺も考えたが「天満の次は福島が人気エリアになる」と見込んで福島駅エリアで探した。

【 店舗デザイン・設備 】
BARといえば赤、PUBといえば青というイメージを持っていたので、独自性を出すためにビタミンカラーのオレンジ色を選んだ。店の外に置いてあるスモーカー(燻製器)もアクセントになっている。

【 開業までに要した期間 】 4年

【 「あきない虎の穴」担当者からのコメント 】

今だから言いますが「あきない虎の穴」の面談で初めて会ったときは、かなり個性的だな〜と感じた山中さん(笑)。それが、回を重ねるごとに人となりがわかってきて、修了式のときには「なんや、普通にイイ人やん!」となり、開業するまでの数年間も定期的に来てくれて、バイト先などさまざまな相談に乗ったり、色々ありましたね~。それが今年で開業10周年!実は繊細な山中さんの出す料理や人柄に惚れた常連さんが応援してくれた結果でしょうね。確かに、燻製ハンバーグは旨かった!

(大阪産業創造館 創業支援チーム 浜田 哲史)

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【 あきない虎の穴 】https://www.sansokan.jp/tora

福島 燻製バル トリンプ-TRIUMPH-

代表

山中 啓史氏

https://bar-triumph2013.gorp.jp/

座席数/15席
開業日/2013年6月