海外展開/インバウンド

《講演録》海外フォロワー数100万人超!セレッソ大阪のアジア戦略から学ぶ海外認知向上のヒント

2023.09.11

2023年5月22日(月) 開催
【トークライブ!】
《講演録》海外フォロワー数100万人超!セレッソ大阪のアジア戦略から学ぶ海外認知向上のヒント
猪原 尚登氏(株式会社セレッソ大阪 事業部長)

インバウンド観光客や海外市場をターゲットにする日本企業が増えるなか、扱う商品やサービスが海外の人々に認知されなければ売り上げを伸ばすことは難しい。猪原氏は、セレッソ大阪の設立当時から海外戦略に携わり、クラブや選手の魅力を発信するコンテンツづくりを続けてきた。現在、100万人を越えるSNSフォロワーのリソースなどを活用し、パートナー企業と海外を結び付ける事業を多角的に展開中。今回のトークライブでは、セレッソ大阪の海外戦略や海外での認知力を高めるヒントを語ってもらった。

 
地域に根づくセレッソ大阪

セレッソ大阪の前身は、ヤンマーディーゼルサッカー部です。1957年に創部し、65年に日本サッカーリーグに参加。リーグ戦で4回、天皇杯で3回の優勝を果たし、日本サッカー界で初めてブラジル人選手を選手登録するなど、名実とも日本サッカー界を牽引してきたクラブです。

93年に開幕したJリーグは今年で30周年を迎え、セレッソ大阪は95年にJリーグ昇格を果たしました。セレッソ大阪は大阪市、堺市をホームタウンとして、地域社会の発展に貢献するためのホームタウン活動に取り組んでいます。その一環として、セレッソ大阪のコーチが学校に出向いて授業を行ったり、地域の子どもやシニアの方々と健康増進活動に取り組んだりもしています。

セレッソ大阪を代表する選手として、今シーズンからセレッソ大阪に復帰した香川 真司選手、元日本代表で現キャプテンの清武 弘嗣選手、元韓国代表のキム・ジンヒョン選手らがいます。若手のホープとしては、パリオリンピック代表候補の西尾 隆矢選手や、U-20のワールドカップ日本代表の北野 颯太選手がいます。この二人はセレッソ大阪のアカデミー出身で、私どもは「世界をめざせる選手を育てる」ことを重要視しています。

© 2018 CEREZO OSAKA

 
アジアから世界へ セレッソ大阪の育成哲学

今年30周年を迎えたJリーグは、アジア戦略も進めており、2012年からはタイ・プレミアリーグ(当時)と提携し、以後も東南アジアの国々とパートナーシップを結び、現在は約10カ国と提携を行っています。セレッソ大阪も2012年3月には、タイの強豪クラブ「BGパトゥム・ユナイテッド」(当時は「バンコク・グラスFC」)と提携し、タイでシーズン前のトレーニングキャンプを行ったり、同クラブと親善試合を行ったりしています。

また、タイの選手の中には期限付きでセレッソ大阪へ移籍した選手もいます。彼は日本での出場機会はありませんでしたが、現在はタイに戻って所属チームの中心選手として活躍中です。セレッソ大阪で育ち、自国に戻って活躍するという、まさに我々のめざす育成の形を体現した選手の一人であり、長年取り組んできた育成活動が結実したと考えています。

2018年から19年にかけては、テレビ大阪と一緒に「ASEANドリームプロジェクト」を立ち上げました。ベトナム、タイ、マレーシアの3カ国で、中学生の年代の選手を5人ずつ選抜し、セレッソ大阪の選手と試合をしたり、Jリーグの試合を観戦したりしてもらうというものです。実際にテレビ放映され、現地メディアからも注目していただきました。

 
日本と東アジアの企業をつなぐ

クラブの認知向上には、タイのシンハービールとトップパートナー契約を締結したことも貢献していると思います。ちなみにですが、日本のスタジアムでシンハービールが飲めるのはセレッソ大阪の試合だけです。

加えて、クラブパートナーにナカバヤシという日本企業があります。現在、このナカバヤシの海外ビジネスをセレッソ大阪がマッチングしています。ユニフォームにパートナー企業のロゴを付けたり、スタジアムに広告看板を出したりするだけではなく、国内企業の海外進出に一緒に挑戦するという取り組みです。

「フエルアルバムのナカバヤシ」として知られる同社は、数十年前からアルバム事業をどう次の事業へ展開するかという課題を抱えていました。その解決策として、まずセレッソ大阪のパートナー企業になっていただき、メイドインジャパンの文具やノートをタイのプロサッカーチームのノベルティにしてみないかと提案しました。

そこから、ガラス製品を手掛けるタイの企業と、ナカバヤシの取り扱うオフィス家具とで新たな商品開発をしようという話が出てきました。スイッチを入れると中が曇って見えなくなる仕組みの調光ガラスを制作し、タイから日本へ輸入して事業を展開していこうと、取り組んでいるところです。私たちとしては、サッカーだけでなく、国内外の企業同士をつなぐハブの立場になっていきたいと考えています。

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SNSを活用した認知拡大

さて、SNSを活用した認知拡大について実際にどんなことをやっているか。セレッソ大阪のメディアごとのフォロワー数は、Facebookが110万人、Twitterが22万人、Instagram8.7万人、公式LINE11.4万人、YouTube4万人となっています。Facebookの内訳で一番多いのはインドネシアで、フォロワーの33%がインドネシア語圏の人たちです。

SNSの投稿では、国によって言語を変えたり、内容をその国に合わせてアレンジしたりしています。実際にタイでは、現地のカルチャーに合ったコンテンツを提携クラブとともに作って投稿しています。Facebookではレギュレーションの変更に合わせて、リーチ数やエンゲージメントをどう高めていくかをしっかり考えることが重要だと思っています。

実は東南アジアでは各種SNSの中でもFacebookユーザーが多く、50%以上の比率を占めているので、これをより生かしていこうと考えています。タイには5Gの通信環境が広がっており、YouTubeも広く利用されています。そこでYouTubeでは、セレッソ大阪の試合のライブ配信も行いました。ベトナム代表のゴールキーパーにダン・バン・ラム選手がいるのですが、彼が初めてセレッソ大阪の試合に出た天皇杯の一戦をYouTubeでライブ配信したところ、ベトナム語のコメントが想像以上の数で寄せられたこともあります。

セレッソ大阪には女子チームもあり、来シーズンから日本女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」に参入することになっています。東南アジア選手権の強豪であるベトナム代表との試合の模様をライブ配信し、こちらも現地からの反響が多くありました。

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コネクションを生かし課題解決

今後の取り組みとしては、社会課題の解決に向けてサッカーを活用しようと考えており、JICA(国際協力機構)とさまざまな話し合いを行っています。セレッソ大阪は10年近くタイで活動してきたこともあり、その経験を国際協力の活動にどう取り入れていくことができるかを検討しています。

具体的には、かねてより大阪で続けてきた、体育の授業にコーチが行ってスポーツをする楽しさを伝えるホームタウン活動を、海外でもできないかと考えています。単に子どもたちにサッカーを教えるだけでなく、サッカーを通じて体を動かす楽しさを知ってもらえるようなプログラムを提供していくことが理想です。

ビジネスにおいては、提携クラブだけではなく、タイでの連携事業の中で生まれたコネクションを通じて、より広くビジネスを拡大できないかと、Jリーグ側とも相談しています。たとえば、セレッソ大阪のパートナー企業でお菓子の製造・販売をしている企業様が、タイで商品を販売したいと考えておられました。そこで、まずJリーグを介して現地の商業施設に私たちからコンタクトを取り、その後自らタイへ商品のサンプルを持って行き、商業施設の担当者に提案したこともあります。

セレッソ大阪は、ファンの方々はもとより、こうしたパートナー企業の皆さんに支援をいただいてクラブが成り立っていると考えています。東南アジアの成長は著しく、日本企業の中でも、これから東南アジアで事業展開したいというニーズが増えてくるのではないでしょうか。そうしたニーズにセレッソ大阪としてもしっかりとした実績を構築しつつ、さまざまな分野で役に立っていきたいと考えています。

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(文/安藤智郎)

 

セレッソ大阪
1957年創部のヤンマーディーゼルサッカー部を前身として、93年にセレッソ大阪の名前で独立。95年より日本プロサッカーリーグのJリーグへ参入後、大阪市および堺市をホームタウンとして、セレッソ大阪の運営のほか、様々な地域貢献活動を行う。クラブスローガンは「SAKURA SPECTACLE 閃け。輝け。咲き誇れ。」。クラブ名の「セレッソ」はスペイン語で桜(※大阪市の市花)の意。

 

猪原 尚登氏(株式会社セレッソ大阪事業部長)
1997年、大阪サッカークラブ株式会社(現・株式会社セレッソ大阪)入社。入社後、事業部に配属。チケットセールス、グッズ販売、ファンクラブ運営、パートナーシップセールスなど事業全般を担当。2020年2月より現職。大阪府出身。

株式会社セレッソ大阪

事業部長

猪原 尚登氏

https://www.cerezo.jp/

事業内容/ (1) サッカー等のスポーツの興行 (2) サッカー等スポーツスクールの企画・運営 (3) サッカー技術の指導ならびにサッカー選手および指導者の養成 (4) スポーツ用品、玩具、衣料…等の販売 (5) サッカーおよび他のスポーツに関する各種催しの入場券およびスポーツ施設利用券等の販売