《講演録》「小さな企業が生き残る」これからの時代のモノづくり×デザイン×経営
《講演録》2019年2月4日(月)開催
【トークライブ!】
「小さな企業が生き残る」これからの時代のモノづくり×デザイン×経営
話し手:金谷 勉氏
(有限会社セメントプロデュースデザイン 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)
聞き手:山崎 大祐氏(株式会社マザーハウス 取締役副社長)
優れた技術を持つ中小企業が日本には多く存在する。しかし、「素晴らしい技術を持っているのに、売れない・・・」「新技術で新しいモノづくりに挑戦したいが、糸口が見つからない・・・」など、縮小する国内市場の問題や激しさを増す国際競争から、厳しい環境に追い込まれている。
そんな中小企業の悩みに真剣に向き合い、技術をデザインの力で再構築し、新しい可能性に変えることで大ヒット商品を数々生み出してきたのが、金谷勉氏が率いるセメントプロデュースデザインだ。
セメントプロデュースデザインと金谷氏自身の紆余曲折を経たストーリーやモノづくりへの想いに、モノづくりメーカーとして国内外に展開を広げるベンチャー企業・マザーハウス取締役副社長の山崎大祐氏が迫る。
―― 全国のモノづくりの現場に関わられてきて見えてきた今の可能性や問題点を教えてください。
今まで日本各地のモノづくりを支えてきたのは誰かと言いますと問屋さんや商社と呼ばれている方だったんです。最大の問題は、これら問屋が生産拠点を変えてしまったというのが大きいです。それで職人が頑張ってモノを作って自分で売らないといけなくなったんです。
例えば器を売っていた問屋さんはみんな百貨店でいうとキッチン用品売場に殺到して同ジャンルで競合します。そこで誰かが企画の差別化にいけばよかったのですが、価格の差別化にいってしまった。値引き競争になると一抜け、二抜けとなっていき、四抜けあたりでもう日本ではモノを作らなくなる。というのが私が考える国外に産地が移った理由です。
―― 最近、陶器の有名な産地の地元で売っているモノですら「メイド・イン・チャイナ」のものがあったりしますよね。
だから「職人と商人の関係の再生」が不可欠だと思っています。職人さんを「1」、問屋さんを「2」と呼んでいますが、「2」の存在はすごく大切だと思っています。新しい技術の探究も必要ですが、その上でそれとマーケットをブリッジする新たな問屋の形、私は「ニュー問屋」と勝手に呼んでいますが、そういう存在に自分たちがなっていかないといけないと思います。
これまでの売り場で一番力を持っていた百貨店が進めてきた「派遣店員付き委託販売」の仕組みが小さな会社の負担を大きくしているように感じます。商人が進めてきたことを職人がすべて担わければならなくなった。
それで私が展開している「コトモノミチ」というのは、職人である「1」、企画・デザインの「2」、売り場である「3」の連携なんです。ここがしっかりスクラムを組んでいかないと、この間のミスマッチ感は消えないと思います。
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