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「ミドリムシ」が地球を救う!揺ぎ無い意志とバイオテクノロジーが切り拓くイノベーションビジネス。

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東京大学卒、大手銀行を経て独立、世界で初めてCO2固定能力に優れる微細藻類であるユーグレナ(和名:ミドリムシ)の屋外大量培養技術の開発に成功し、2012年に世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダーズ2012」に選出された株式会社ユーグレナの出雲社長。バイオテクノロジー企業として株式公開も果たす創業者の出雲氏が、起業家として見る現在・過去そして未来について語った。(2012/11/17講演録)

バングラデシュへ

今日は、私がなぜミドリムシで起業したのか、ミドリムシでどのようなビジネスをしているか、という二つのテーマでお話しします。 私は大学まで、海外に行ったことがなく、大学に入学した頃は、とにかく海外に行きたくて真っ先にパスポートを作りました。誰も行ったことのないようなところに行きたいと思い、選んだのがインドの東側にある旧東パキスタン、今のバングラデシュという国です。

日本では情報がほとんど入らなかったため、現地でホームステイしながら、国の様子を見て回るのに都合がいいプログラムは無いかと探しました。そこで見つけたのが「グラミンバンク」というNGOのインターンシップです。創設者がムハマド・ユヌスという方で6年前にノーベル平和賞とられて、大変著名な方になられました。

「グラミンバンク」は農村で貧しい生活をしている女性に少額のお金を貸し付けます。バングラデシュでは500円から1000円ほどでコンビニエンスストアのような雑貨屋さんを始めることが出来ます。そのようにして女性の自立を支援する組織として始まりました。

そこでインターンシップをさせて頂いたのですが、バングラデシュは行く前のイメージとずいぶん違うことがわかりました。

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3食米だけのカレーを食べる子どもたち

私はバングラデシュに行くことが決まってから、きっと現地の子どもたちはひもじい思いをして苦労しているだろうから、とカロリーメイトをたくさん持ち込みました。ところが、バングラデシュに行っても食べ物をくれという人はおらず、かなり貧しい農村のエリアでも1日3食朝昼晩カレーライスをちゃんと食べています。

ところが、肉や魚や牛乳や卵、ヨーグルト、野菜、フルーツに含まれているような他の栄養素はバングラデシュの食卓やアフリカの食卓にはまったく上がらないのです。

たとえば、人参にはビタミンAとベータカロテンという抗酸化物質が含まれています。目の細胞が形作られていく時に必須の物質で、これが不足すると「夜盲症」という病気になると言われています。その名の通り、夜になると視力が著しく衰え、目がよく見えなくなる病気で、バングラディッシュの4分の1の子どもがかかる病気です。バングラデシュでは大人も子どもも夜になると本当に何も見えなくなってケガをします。ケガをしたところからウイルスが入って、感染症にかかってしまうのです。この夜盲症で困っている人たちは南アジアだけで2億5000万人もいます。

大事なことは、ビタミンやミネラル、タンパク質、DHAなどを含む様々なものをバランスよく食べて生活しなくてはいけないのです。そこで私は、バングラデシュで野菜、肉、魚をカレーに混ぜていろんな栄養素がいっぺんに摂れるようにしなければいけないと考えました。これが私の出発点です。

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ミドリムシとの出会い

以来、大学在学中に知り合った友人と探し続けて、ある日出会ったのがミドリムシです。ミドリムシは動物と植物両方の性質を持っています。魚と同じようにDHAも作りますし、肉と同じようにタンパク質をたくさん持っています。動物なのですが、緑色をしています。つまり、クロロフィルを持って光合成をしますので、植物と同じように様々な抗酸化物質を作ります。

ミドリムシの中に植物と動物の栄養素が両方入っているので、人間が生活するのに必要な59種類の栄養素が全部ミドリムシで摂取できます。カレー、パン、ラーメン、トウモロコシ、芋にミドリムシを加えれば、生活するのに必要なすべてのカロリーと栄養素を満たすことができます。それによって栄養素が足りていない世界の10億人の人たちが健康な生活ができるとこういうことを私は12年前の20歳の時からずっと申し上げてきました。

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研究と失敗の連続

ミドリムシは、植物連鎖の底辺にいるため、全ての生き物の餌となっていまいます。そのため、無菌状態で繁殖させなければならないため、大量繁殖に成功した人はいませんでした。大量繁殖に成功しなければ、多くの人に安価にミドリムシを食品として提供することができません。そこで、ミドリムシは酸性に強いというデータを見つけ、ミドリムシの成長には支障がなく、ミドリムシ以外の天敵は嫌う培養液の研究を始めました。とはいえ、酸性の培養液といっても、液体と濃度の組み合わせは膨大にあり、毎日毎日失敗の連続でした。結局、在学中には大量繁殖できる培養液の開発をすることができず、大手銀行に就職しました。就職してからも、ミドリムシのことが頭から離れず、結局1年で退職。友人3人と本格的に起業して、ミドリムシの研究に没頭しました。自分たちだけで実験をしていても時間が掛かるだけなので、失敗したデータを入手するために、多くの大学を訪ねてデータを収集したことで、皆さまの協力のもと大幅に時間の短縮ができました。そしていよいよ、ミドリムシの屋外大量培養に2005年12月16日に成功しました。ミドリムシが安く大量に作れるようになったので、ようやくビジネスができる状態になったのです。

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ミドリムシを食品として提供する

このミドリムシを使って2つのビジネスを考えています。

まず、ミドリムシの粒を食品としてお届けするビジネスです。栄養が偏っている国の方だけでなく、油の摂り過ぎで困っている日本、アメリカ、ヨーロッパの方々にもミドリムシを召し上がっていただいて、10億人の方に健康になっていただきたい。これが私どものビジネスです。

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ミドリムシでバイオジェット燃料をつくる

ミドリムシを使って何をしようとしているのか、もう一つお話します。バイオジェット燃料を作って、飛行機を飛ばそうとしています。地球の温暖化で大量に出てくるCO2の濃度が急激に上昇すると今までなかった場所で突然の豪雨や海水の温度が上がって台風が起きたりします。そこで、これ以上石油を使うのは止めようということになっています。そこでバイオ燃料に期待が集まっているわけです。

ひまわり、大豆、菜種、ゴマを絞っても飛行機の燃料だけはできません。ところが、ミドリムシを絞ると飛行機の燃料が出てきます。どのミドリムシでも飛行機の燃料ができるわけではないので、その研究を進めているところです。

他にも、東京都の下水場でミドリムシを使って水をきれいにして処理能力を上げる、愛媛県新居浜市にある火力発電所ではミドリムシがCO2を食べて増えていくという実証実験も進んでいます。 このような実証実験を2018年までにありとあらゆる分野で進めていき、栄養素が欲しいという先にはバングラデシュの事例を、水をきれいにしたいという先には東京のある下水場を、ミドリムシクッキーが食べたいという先にはこのスーパーに買いに来てくださいという場を増やしていきます。今後の研究、実験結果を大いに期待してください。

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2012年11月17日
株式会社ユーグレナ
出雲 充

1998年東京の駒場東邦高校から東京大学文科三類入学。在学中にスタンフォード大学で開催された「アジア太平洋学生起業家会議」の日本代表を務め、3年進学時に農学部に転部。
2002年東京大学農学部農業構造経営学専修過程卒業後、東京三菱銀行に入行。
退職後、米バブソン大学「プライス・バブソンプログラム」修了、経済産業省・米商務省「平沼エヴァンズイニシアティブ訪米ミッション」委員を務め、2005年8月株式会社ユーグレナを創業し代表取締役に就任。
同年12月微細藻ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の世界でも初となる食用屋外大量培養に成功。 2010年は内閣の知的財産戦略本部「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会」委員も務めた。
また、安藤百福賞「発明発見奨励賞」受賞(2011年)のほか、中小企業基盤整備機構Japan Venture Awards 2012「経済産業大臣賞」受賞(2012年)、世界経済フォーラム(ダボス会議)Young Global Leaders 2012選出(2012年)。
信念は『ミドリムシが地球を救う』。

著書に『東大に入るということ、東大を出るということ』(プレジデント社)、CDに『食料・エネルギー問題をミドリムシで解決する!』(神田昌典・出雲充)がある。

(2012年11月17日 大阪産業創造館開催「サンソウカン起業家円卓ミーティング」講演にて)

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