商品開発/新事業

《講演録》ニューノーマル時代に急成長!!型破りな企画力で「焼肉ライク」で1人焼肉ブームを巻き起こす

2022.05.12


《講演録》2021年12月11日(土)開催
【起業 STEP UP フェスタ 2021】
「ニューノーマル時代に急成長!!型破りな企画力で「焼肉ライク」で1人焼肉ブームを巻き起こす」

有村 壮央氏(株式会社焼肉ライク 代表取締役社長)

コロナ禍の影響で大きな打撃を受ける飲食業界において、「1人焼肉」という形態が注目を集めている。有村氏は20代で居酒屋チェーンを立ち上げ成長させた後、さらなる挑戦として「焼肉ライク」を開業。創業3年で国内69店舗を展開するブランドへと成長させた。有村氏の創業ストーリーなどから、ニューノーマル時代に求められる経営のあり方を探る。

 
☞ 「みんなが好きだけど一人では行けない」

寿司業界においては、一人でもファミリーでも楽しめる業態として回転寿司がありますが、焼肉業界にはそういった店はありませんでした。回転寿司のような業態を焼肉においてもつくりたいという思いから「焼肉ライク」は始まっています。

一方で、単独世帯数が年々増加し、個食マーケットの規模も年々拡大していたことから、今後も一人で食べにいける業態が広がっていくという予想がありました。

好きな外食に関するアンケートを見ると、ランキング1位は寿司、2位は焼肉です。一方で、一人で行きにくいお店ランキングの1位がフランス料理、2位が焼肉となっています。これが何を表しているかと言うと、「みんなが好きだけど一人では行けない」のが焼肉業態を表すマーケットということです。

焼肉というと、ハレの食事だったり、何かのお祝いだったり、一人で行こうという発想になりにくいところがあります。また、一人当たり3,000円以上が相場ですが、一人で入れて、かつ1,000円で食べられる店が求められているのではないかと考えました。

 
☞ マーケットのある場所で差別化せよ

市場を見ると、焼肉マーケット全体は5,300億円です。しゃぶしゃぶは1,240億円、ステーキ・ハンバーグは1,200億円となっていて、牛肉を中心とするマーケットの中で最も高いのは焼肉です。

マーケットを新たにつくることは非常に難しいし、また力が要ります。外食産業に参入するとき、日常的な食べ物の候補に挙がるものの中で差別化したほうがマーケットを新たにつくるより楽ですし、かつ店舗展開ができます。

たとえば香川の人はうどんを日常的に食べ、広島の人は広島焼きを、北海道の人はジンギスカンをよく食べると思います。人間の習性として、小さいころからよく食べてきたものをおいしいと感じるし、小さいころから食べているものを頻繁に食べるように思います。

したがって、勝負をするならマーケットのある場所において、「なぜ一人で行けないのか」「なぜ高いのか」といった問いを立て、その「なぜ?」の答えを出しながら、いままでにない「ちょっと良いもの」をつくることが大事です。

 

 
☞ メニュー開発やロゴデザインの裏側

出店にあたっては、当初から各地への店舗展開を考えていたので、どの店でも均質性のある商品を提供できるような仕組みを考えていました。ご飯は自動炊飯器と自動盛り付け機を使用して、ボタンを押すだけで提供できる状態で出てきます。

肉に関しては工場でカットし、チルドのまま店に運んで、店員は肉を並べてタレをかけるだけです。そうすることでオーダーから3分以内で提供できますし、店によって味が異なるということは極限まで抑えられます。そもそも調理はお客さまがご自分でするのでクレームがありません。

ロゴと店舗名に関しては、店名にはカタカナを入れることでファーストフードの気軽さや抜けた感じを表現しています。ほかにも、一人ひとりに合わせた「自分ライク」な食べ方があると考え「as you like(お客様が自由に楽しめる)」「like(焼肉が好き)」という意味を含めています。また、海外への展開も考えて英語の入ったロゴで商標登録しました。

 
☞ 女性も入りやすいように視線を区切る

東京・新橋にオープンした1号店は、黒と白のシックな外装に、内装には木を多く用いて温かみを出しています。一つひとつの席は向かい合わせのカウンターになっていて、それぞれに無煙ロースターが付いています。また女性も入りやすいように、周りの視線を区切るための仕切りを設置しています。

メディアは潜在的に一人焼肉のニーズがあると思っていたのか、民放の全局から取材を受けました。そうして取り上げられた効果もあって、店には常に行列ができるように。コロナ禍においても月に1,400万円から1,500万円の売り上げがあり、順調な滑り出しになったと思っています。

新橋という立地に関しては、平日は会社員が多く、土日はインバウンドや乗り継ぎの人が多い。常に人が多く集まる場所だったので出店しました。出店する際には平日・休日とも、どの時間にどんなお客さま(年齢や職業)が来るだろうというのを具体的にイメージしました。

 
☞ 狙うべきはお客さまのモチベーション

お客さまが来店する動機はとても大切です。たとえば20代から30代前半の女性をターゲットとして設定するとき、その年代の中には働いている方や結婚している方、学生などさまざまな立場がおり、共通点はほとんどありません。

サッとお肉を食べたいと思っているのか、焼肉は好きだけど匂いが気になって入りにくいと感じているのかなど、焼き肉に関する動機はさまざまです。その中でどれが一番大きいのか。焼肉ライクでは、接待で行くような「高級なところで脂身のあるおいしい肉を食べたい」という動機を狙っていません。狙うべきは「サッとお肉を食べたい」や「いろんな部位を食べたい」という動機です。お客さまのモチベーションはなにかを的確に捉え、それを狙っていくことが重要なのです。

 
☞ スピードと変化で生き延びよ

コロナ禍においては、出店エリアがビジネス街だったので、2020年4、5月は前年の50、60パーセントの売り上げと大打撃を受けました。夜の営業時間が制限されたために、朝7時や10時から食べられる「朝焼肉」をスタートさせました。出勤前や夜勤明け、ランチのピークを避けたいという人が多かったのか、大きな需要がありました。

また新たな顧客層を開拓するために、大豆を用いた焼肉用の代替肉を業界で初めて取り入れました。これも好評を頂き、毎月3回ほどテレビメディアに取り上げられています。ほかにも困っている生産者の力になりたいと、補助金を利用したりして期間限定で松阪牛を一皿500円で提供しました。

また、テイクアウトも始め、自動で肉を焼き上げる機械を導入したことで、おいしいものがブレずに量産できるようになりました。ほかにも、セルフレジやセルフキャリーを取り入れたことにより、人件費を4パーセント以上削減させました。

「ピンチはチャンス」と言いますが、ピンチのときこそ課題を強く持って、世論の変化やメディアがそれをどう捉えているのかを感じて、スピードを上げて手を打っていくことが欠かせません。

 
☞ 広告費は有限、アイデアは無限

広告費をかけて宣伝しようとすると、どうしても予算の範囲内に収めようとするので「どこにでもあるありきたりのもの」で終わってしまい、期待した効果が出ません。特に創業時は、いかにメディアに取り上げてもらうか、何をPRできるかを検討するほうが大事です。

課題を明確にして、時代の流れを読んで、スピードをもって実行していく。トライアルを多くして確度を上げていくのです。経営が苦しくなると、多角化に走りがちだったり、リスクヘッジという名のもとにさまざまなことをやりたくなりますが、人間の脳は一つのことにしか集中できません。事業家は一点集中でいかに深く考えるか。多角化は力の分散を意味します。

現場においては、お客さまと接するアルバイトの意識がもっとも大事です。私は週1回、アルバイトに向けてメッセージを送っています。弊社でいえば「世界一の焼肉屋になろう」「お客さまのおなかも心も満たそう」「ありがとうを集めよう」と繰り返し伝えています。

私たちの店や事業が存在する意味がどこにあるのかを明確にして、それを一緒に働いてくださる方々にも発信していくことが大事だと思っています。

 
☞ すべてが一本のストーリーにつながっている

今回、講演の機会を頂き、自分の過去を棚卸しして振り返ってみると、すべてが一本のストーリーにつながっていると感じました。

地元・奈良の近鉄大和西大寺駅構内に100店舗目をオープンしたこともそうですし、大学を辞めるという挑戦、会社経営を辞めて一から始めるといった挑戦が今に続いていると強く感じています。後悔しないためにも挑戦し続けることがとても大事です。

大学を辞めたときは親に迷惑をかけ、前の会社を辞めたときは会社のメンバーに迷惑をかけました。それでも最近では、日本テレビ系列の朝の情報番組「ZIP!」で水卜麻美アナウンサーにインタビューされている様子を、親がテレビで見て喜んでくれたりしています。

特に、家族がいるから仕事を頑張れていますし、これからも挑戦と感謝を通して「自分のストーリー」をより良くしていくことが大事だと思っています。

※店舗数は講演日(2021年12月11日)時点

 
(文/安藤智郎)

 

有村 壮央氏(株式会社焼肉ライク代表取締役社長)
1980年(昭和55年)京都府出身。大学中退後、居酒屋で1年間修業。2004年7月、有限会社アントレストを立ち上げ「魚串さくらさく」をはじめ10店舗の飲食店を経営。同社を譲渡後、株式会社ダイニングイノベーションに入社し、2018年8月に「焼肉ライク」新橋本店をオープンさせるなど事業を推進。翌年3月にフランチャイズ展開を開始。2019年4月に株式会社焼肉ライクの分社化と同時に現職に就任。創業3年で国内69店舗を展開するブランドへと成長を加速させている。

株式会社焼肉ライク

代表取締役社長

有村 壮央氏

https://yakiniku-like.com/