スタッフ連載

クラフトビールをフックにして人々がつながり、集うお店づくりをめざす「ブリューパブスタンダード株式会社」の起業ストーリー。

2024.04.25

大阪産業創造館 創業支援支援チームの【起業プログラム】を実際に利用し起業した“先輩起業家”を紹介する連載コラム。起業を志したキッカケや、困難に直面したとき乗り越えた方法、また事業を軌道に乗せるために必要なことなど。一歩先をいく先輩起業家の体験談を紹介します。

【起業家図鑑】vol.46
クラフトビールをフックにして人々がつながり、集うお店づくりをめざす
「ブリューパブスタンダード株式会社」の起業ストーリー。

逆境を好転させたブリューパブスタンダード株式会社 松尾氏の「柔軟な発想力」にクローズアップする。

▼起業アイデアはどこから?
辻調理師専門学校でフレンチを学び、東京で調理師として働く中で、いつか独立したいという夢を抱いていた。しかし、東日本大震災をきっかけに大阪に戻る。東京で流行していたクラフトビールに興味があったのと、大阪で取り扱っている店が少なかったことから、「クラフトビールをつくって飲めるお店ならビジネスになるのではないか」と考えるようになった。ビール業界は未経験だったため、飲みに行っているお店で情報収集をしたり、特に技術面では、その道のプロに相談したりした。「このアイデアで勝負する」と決めてからは、実際にビール製造会社で3年間の修業を積んだ。

▼起業プログラムの利用と活用
【あきない虎の穴】を受講したきっかけは、飲食業を志す人々向けのプレゼンテーション大会のフェアに偶然出会ったこと。飛び込み参加し、そこで【あきない虎の穴】の存在を知ることとなる。さらには、実際に開業をめざす段階で【融資が必要な人のための事業計画作成講座】を知り、積極的に参加した。
プログラムに参加したきっかけは、やりたいことが明確で、構想を練る期間が2年、修業を積む期間が3年と、準備期間も5年間あったからだ。ビジネスプランは詳細に練り上げていたが、あとは、それが世間に通用するのか不安だったこともあり、知人に相談するのではなく、広く意見を求めた。
プレゼンテーションを通じて【あきない虎の穴】プログラムに参加し、具体的なアドバイスを得ることができ、ビジネスプランのブラッシュアップもスムーズに行えた。

▼起業後の苦労と乗り越えた方法
開業は32歳の時。一人で開業するつもりだったが、調理やビール製造には協力者が必要だった。前職で共に働いていた同僚や、知人にメニュー開発などの協力をお願いしました。知人は調理師で、互いにフレンチ出身でビストロ系が得意であり、その実力を信頼していました。また当時、彼が転職を考えていた時期でもあり、話がスムーズに進み、開業を支えてくれることとなった。
起業後は、初年度から自らキッチンに立ち、メディアで取り上げてもらう機会も多く、滑り出しは順調だった。しかし、ビールの製造量が上限に達し、需要に対応できなくなる。そこで、二号店を開業し製造量を増やす計画を立てた。借り入れをして二年後に二店舗目を開いたが、一号店のブームが去り、二号店が軌道に乗るまでの間、運転資金の借り入れや金銭的なショートが問題となった。そんなときでも、松尾氏はすぐに行動し、飲食組合で特別融資枠を利用するなどして、なんとか危機を乗り越えた。

その後、コロナ禍により休業を余儀なくされたが、スタッフの給与を支払うため、飲食サービスだけでなくビール製造を強化し、物販に切り替えるなど営業のバランスを調整した。スタッフの雇用を守るため、完全な休業は避け、昼間はカフェとして営業した。2020年終わりごろ、コロナ禍が収束するという噂があり、期待して三店舗目の契約をしたが、事態は治まる様子もなくコロナ禍でのオープンとなり、最初の一年はまともに営業できなかった。幸いにも、三店舗目は他の店舗と比べると小規模だったため、大きな影響を受けずに済んだことで胸をなでおろしたという。
大阪でもクラフトビールが注目されだしたことで、物販の店やビールメーカーへのコンサル業の依頼も増えた。物販は企業や飲食店向けのOEM製造に注力し、現在も好調だという。思わぬ業態となったが、キャッシュフローが増え、コロナ禍の苦労も前向きに捉えることができた。

▼事業展開に必要だった「時間」をつくること
初期の段階ではお店をコントロールすることに力を注いでいたが、途中から複数の店舗を展開し、スタッフも増員したことで、時間に余裕ができた。事業を拡大するという目標を持つならば、人脈を広げるためにも柔軟に行動できる時間が必要だと実感したという。
また、もう一つの変化としては、自分が店舗に入らなくても、スタッフが自ら考え、運営するようになったこと。スタッフの能力が向上し、彼らの成長に貢献すると同時に、新たな雇用を生み出す機会にもつながっている。
クラフトビール業界をもっと広げたいという思いもあり、さらなる事業展開を考えることができているのも、「すべてを自分でやらない」という姿勢が成果を生んでいると感じているという。

▼未来の起業家へのメッセージ
プレゼンテーション大会に参加した際、ある審査員からの、「今のビジネスプランは、どれくらいの勝算があるか?」という問いに、「8割」と答えると、「6割の勝算があるならばやった方がいい。残りの勝率を上げるのが『経営』だ」という言葉をかけてもらいました。その言葉は、今の経営の“ものさし”となっています。今持っているビジネスプランで、勝てると思ったなら、早く起業した方がいいです。今は、副業やパラレルワークなども一般的ですし、半分程度のリソースでコンパクトに始めていくことも可能です。特に飲食店は、仕込みなども含め長時間かかり、仕入れと売上のバランスなどリスクもありますので、週末起業でテスト開業してみるのも良い選択肢だと思います。

9年目を迎えるブリューパブでは、常連さんを集めて“ゆるランビール部”という活動を行っている。
ビールを楽しむことを通じて、さまざまな年齢や背景を持つ人々がお互いを支え合うコミュニティが形成されていく姿は、まさに心温まるものです。
お店をコミュニティとし、ビールをフックにした人間関係が広がり、お店で過ごす時間がより豊かで充実したものになるように、これからも頑張っていきたいと思います。

松尾 弘寿氏

アイデアだけでもいい、まずは誰かにそのアイデアについて話してみませんか?
大阪産業創造館では、起業に役立つセミナーやプログラムをご用意しています。

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⇒利用した起業プログラム
「融資が必要な人のための事業計画作成講座」
当講座は、日本政策金融公庫(大阪創業支援センター)をはじめとする金融機関の方々の協力により、実際に融資審査をする側の視点からの具体的なアドバイスを元に、ビジネスモデルの「具体性」「実現性」「数値計画」をブラッシュアップすることで、希望する金額を調達するために必要な事業計画書の作成をゴールにしております。
https://www.sansokan.jp/yuushi/

「飲食店開業シミュレーションプログラム『あきない虎の穴』」
飲食店の開業を確実に成功させたい方に。はじめての飲食店開業で失敗しないための15DAYS
https://www.sansokan.jp/tora/

 

ブリューパブスタンダード株式会社

代表取締役

松尾 弘寿氏

https://brewpubtv.com

酒類の製造、企画販売及び輸出入 飲食に関する教育、研修、セミナー、講演の企画及び運営