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素人の発想だから生まれた「自転車版ETCシステム」

2014.05.09

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自転車とICタグの相性は悪い―。5年ほど前までは、これが業界の常識だった。
定説を覆したのは、ICタグについては門外漢だった岡田氏だ。

きっかけは、滋賀県草津市の玉川地区の交通安全協議会から寄せられた「地域内を走る自転車と歩行者の通行量、ルートを把握し交通安全対策に役立てたい」という依頼だ。どんなシステムを組んだらよいかを知るため、本業の広告業で取引先だった大手電機メーカーの担当者に尋ねて回った。

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当初はGPSの活用を考えたが予算を大幅に超えてしまう。そこで着目したのがICタグ。基地局から発信される電波をICタグに埋め込まれたICチップが受信し、さまざまな情報を記録できる仕組みだ。交通標識などに取り付けた基地局の電波を効率よく受信するには電波の発信方向と垂直方向にI C タグを取り付ける必要がある。岡田氏は、反射板とICタグを一体化させて車輪のスポークに装着する方法を思いついた。

業界ではこれまで自転車の骨組み部分となる金属パイプに取り付けていたが、パイプの金属が電波を吸収してしまうため精度が落ちる。ではスポークに取り付けることをなぜ思いつかなかったのか。「ICタグが回転すればますます受信しにくくなるだろうとの思い込みがあり、車輪につけるなど考える人はいなかった」と岡田氏。

検証してみると、回転に伴って受信できるエリアが広がり、ほぼ確実に受信できることがわかった。この結果を受け、草津市から自転車駐輪場の入出庫を無人で管理できる“自転車版ETC”システムの開発を受託したほか、認知症などの徘徊者を見守るシステムなども開発し、ICタグ事業を着々と広げつつある。

現在、岡田氏は広告業を手放し、「交通弱者や生活弱者を守るための補助システム」の開発に業態を転換している。「ニッチなマーケットで大手が手がけようとしない分野だが、誰かがやらないといけない」と岡田氏。「社会に役立つ」というモチベーションをエンジンに日々開発に打ち込んでいる。

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▲“自転車版ETC”システムは博多市にも納入され、近々廉価版システムも発表する。

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▲反射板に埋め込まれたICタグ。これが車輪のスポークにつけられている。

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元金融マン竹内が紹介する各信金の特長

プロデュース能力に長けた北摂の大信金
北おおさか信用金庫
今年の2月に摂津水都信用金庫と十三信用金庫が合併して誕生した、新しい信用金庫です。中小企業の支援メニューもとても手厚くなっています。特にシンクタンクである大阪彩都総合研究所は、食品にフォーカスした「うまいもん市in万博」や、地元の大学と連携した「産産学ビジネスマッチングフェア」などの大規模商談会を毎年開催しています。もちろん個別企業へのコンサルティングや啓発セミナーなども実施しており、総合的なサポートが特長です。

竹内 心作大阪産業創造館「中小企業応援団」事務局

大阪市の中小企業支援拠点「大阪産業創造館」と大阪府下の約32の金融機関が協働で、中小企業の事業成長をサポートする「中小企業応援団」を立ち上げ、商談会やビジネスマッチングの仕組みを多数展開。前職は金融マン。金融機関の事情にも中小企業の事情にも精通する必殺仕掛け人。

サンズムーン株式会社

代表取締役 

岡田 匡史氏

http://www.sunsmoon.com/

2008年に広告会社として創業したが、現在ではICタグで自転車駐輪場管理システムの構築をはじめとするICタグを使ったさまざまなシステムに特化して事業を展開している。