「できた!」その瞬間があるから頑張れる
8時間の月極保育と30分から利用できる一時保育をメインに、24時間対応で子どもたちを受け入れる「HUG(ハグ)」を開設したのは昨年6月。認可保育園に入れなかった子どもも多い。また、心斎橋の近くという立地もあり、夜間に働く母親たちからも頼りにされている。
いつかは託児所を運営したいと考え、認可保育園をはじめインターナショナルスクール、幼児教室や病院内保育など、16年間さまざまなジャンルの保育現場に携わってきた。
その中で感じたのは、幼少時の教育の必要性。親の収入や家庭環境に左右されず、小学校に入るまでに基本的な生活習慣を身につけさせてあげたい。
「難しいことではないんです。靴ひもが結べたり、お箸が使えたり」。英語や音楽などを取り入れ、子どもたちが楽しみながら学ぶ環境をつくっている。
現在4名いるスタッフの育成にも力を入れている。毎月、個別に面談の場を設け、日々の仕事を振り返って目標を立てる。その月の行動指針はボードに記入し、常に目に付くカウンターの上に。業務内容のチェックシートも作成し、全体での会議は必ず議事録を残す。ホームページやブログのアクセス解析も行い、どういう記事やワードへの反響が多いのかを共有。
「定期的に洗い出しをして、不要な業務は削ればいい。でも、ブレずに同じ方向を向いていたいんです」。
開業前の施設探しでは、託児所は子どもの出入りが多く、泣き声などの騒音が予想されるせいか、入居を断られることもあったとか。
「ここは通りに面しているので、外からも様子が見える。お母さんたちにも明るくて入りやすかったと喜ばれています」。
「今後一年以内には認可保育園もつくりたい」。認可施設は国の補助金があるため、保育料を約半分にできる。あらゆる環境に育つ子どもたちに教育の機会を広げたい。そのためにも、人材育成が急務になっている。
温かい食事が摂れるよう、園児のごはんは施設内で手作り。この日のメニューは野菜炒めとシュウマイ、味噌汁にご飯。その後、子どもがお昼寝をしている間に、北澤さんもスタッフと一緒にようやくランチにありつく。話題の主役は、やっぱり園児たちだ。
「今日はこんなことができるようになった」と成長ぶりを実感するひとときであり、一日で一番ホッとできる時間でもある。
とはいえ、睡眠は平均4時間。24時間対応なので、自宅にもほとんど帰ることができない。「園内ではモグラ状態ですよ(笑)」。
それでも笑顔で過ごせるのは、子どもたちの成長を日々感じられるから。積み木がふたつ重ねられるようになったり、○(マル)が描けるようになったり…昨日までできなかったことができた時の子どもたちの笑顔といったら!
その瞬間に出会えることが最高の幸せだ。
(取材・文/衛藤真奈実 写真/福永浩二)