大企業のサラリーマンか、好きなことをやれる人生か
子育て中で外食がままならない。でも、おいしいものを食べながらみんなでわいわいしたい―。
そんな女性のためにWeb上で好きなシェフを選び、自宅で出張料理をしてもらえるマッチングサービスを2015年7月に始めた。
起業したいとは思っていたものの、すぐにそこへたどりついたわけではない。超優良とされる企業で9年勤めた後、創業まで2年を要した。うどん店、ネイルショップ…。
アイデアは浮かぶがいざ踏み出そうとすると「うまくいくだろうか」との不安がもたげた。「失敗したらどう思われるか」。大企業勤務で染みついた体面が邪魔をした。
Web制作会社で働くうち「純粋に好きなことをやろう」と思えるようになった。実店舗でなくWebを有効に使う発想が生まれた。もともとホームパーティが好きで、周囲で子育て中の女性から外食に行くのが難しいとの話を聞いたことがWeb上のマッチングサービスの誕生につながった。
しかしシェフ集めで苦労した。店を持ちながら出張にも応じてもらうため、手当たり次第では効率があまりにも悪かった。
そこで独自の仮説を立て、声をかけるシェフのターゲットを絞ると確率が上がった。会社勤務時代に学んだ手法だった。
事業の拠点はコワーキングスペース。
同じ志を持つ起業家やオーナーらが広報、Webのデザイン、プログラムをサポートしてくれた。「一歩前に踏み出すことで人脈が広がり、やるべきことが見えてきた」。
現在20人の登録シェフを100人にまで増やすことが当面の目標だ。
創業2年目の7月1日から初めて従業員を雇い入れ、ホームパーティに色を添えるバルーンアート事業も始めた。創業からの1年で、動かずに悩んでいるより、一歩前へ踏み出し動き出すことで見方が変わり、協力者も現れることを知った。
最近、「投資をしたい」という声もかけてもらった。「第2、第3の事業の柱を生み出すことを考えるきっかけになった」。創業2年目を迎え、新たな世界がまた見えてきそうだ。
▲代表取締役 東條 恭考氏
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)